世界最高齢女性115歳、これが「長寿の秘訣」だ
ギネス・ワールド・レコーズ(英国)から「世界最高齢の女性」と認定され、今月5日には115歳の誕生日を迎えた大阪市東住吉区の大川ミサヲさん。今の一番の楽しみは「ごちそうを食べること」で、車いすを自分で動かすのが日課という。「超」がつくほどの高齢にしてこの元気さ。どうすればこんなに長寿になれるのだろうか。
(山崎成葉、五十嵐一)
■橋下市長も祝福
115歳の誕生日を迎えた今月5日。大川さんが現在暮らしている大阪市東住吉区の特別養護老人ホーム「くれない」は、祝福ムードに包まれていた。
午前10時過ぎ、部屋を訪れると、大川さんはベッドで休んでいた。部屋には届いたばかりの橋下徹・大阪市長からのお祝い文などが飾ってあった。前日に午後8時半頃まで話していたという職員が誕生日を祝うと「ありがとう」とほほ笑み、「(昨日は)夜遅うなったな」と職員を気遣っていた。
33歳の若さで亡くした夫の幸男さん(享年36歳)について聞くと、「もう、なごう(長く)夢には出てけえへん」。若い頃のことについては「心斎橋に行って人がぎょうさんおるのが好きやった。きれいな洋服こうてもらうんが楽しみやった」とうれしそうに振り返った。今の楽しみは「ごちそう食べることが一番ええわな」と笑った。
職員によると、2月27日のギネス認定式以降、取材対応への疲れなどもあって体調を崩していた。5日は午前7時過ぎに起き、食パンとサツマイモのリンゴ煮、ピーチゼリーを完食したという。
■記者会見で「勇姿」披露
誕生日の記者会見は正午過ぎに開始。大川さんは鮮やかな緑色のストールを羽織って現れた。集まった報道陣は約20人。「ぎょうさん来てくれはって結構なことや」と驚いた様子だった。
職員から花束を贈られると「大きな花束をくれはってありがとう存じます」と応じた。さらに、水玉のストールがプレゼントされ、「へー、えらいきれいなんくれたな。みなさんから祝っていただいて、うれしいです」と感謝の言葉を口にした。
そのまま昼食となり、特別メニューの好物サバのきずしが提供された。「上手に作ってはる。おいしい」といって完食し、さらに好物のうどんも「味はええ」と自分で箸を運び、一度も器を置くことなく食べ尽くした。
昼食後に「誕生日の願い事」を訪ねると「ごちそういっぱい食べたから当分よろしい」。115年の人生は「短いな」と笑い、男女合わせた世界最高齢の木村次郎右衛門さん=京都府京丹後市=と同い年になったことに「まだ若いな」と話した。
これまでさまざまな出来事をくぐり抜けてきたが、一番幸せだったのは「(生家の呉服屋がもうかって)わりにぜえたくさせてもらってた」こと。また、橋下市長については「喜び文句贈ってくれはったし、けっこうやわ。顔は知らんけどええ人やと思います」と話した。
約1時間の記者会見を終えた大川さん。「みなさんありがとう」と、何度も礼を言いながら会見場を後にした。
このあと午後3時には、誕生日祝いのスポンジケーキを8分の1カット完食。大川さんは「まだ食べられる」と“おかわり”を求めたが、職員が夕食を控えていることを考慮してストップさせたという。
また、夕食後の午後8時ごろには、長男の紘史さん(90)からこの日午前中に届けられた「祝115」と刻印された紅白まんじゅうを半分ほど食べたという。
■規則的な食事
大川さんはふだんどんな生活を送っているのだろうか。職員に平均的な1日を尋ねると-。
起床は午前7時~8時。1日の大半を車いすで過ごすという大川さんは、起きるとすぐにベッドから車いすに移動する。5年前までは自力で歩いていたが、転倒予防のため常時車いすを使うようになったという。午前8時半ごろまでに朝食。基本的にパン食で、食パン、菓子パン、ロールパンなど何でも食べる。ほかに、野菜などの小鉢一品とゼリー、牛乳。朝食はいつもほぼ完食するという。
職員の介助を受けながら入浴したあと、昼食は正午ごろ。メニューは、魚料理、肉料理のいずれかがメーンで、小鉢一品、汁物、おかゆ(軟らかいごはんのときも)、果物。「午後3時のおやつ」は、カステラ、プリンなどを食べる。夕食は午後6時ごろで、肉料理か魚料理のメーンディッシュに小鉢一品、おかゆ、汁物といった献立だ。
食堂での食事以外では、食堂や廊下などで静かに過ごすことが多いが、朝昼夕の食後にはよく、自分で車いすを動かして廊下などを“散歩”する。車いすに乗ったまま「昼寝」もよくするそうだ。
夜は、大川さんが「眠たい」と言うと、自室に戻ってベッドに横たわり、就寝する。平均すると午後9半~10時ごろ。大川さんは寒がりで、冬場はとくに、風邪をひくことがないよう着替えを職員らが手伝って手際よく行う。特養ホームの管理医師は、大川さんの長寿の理由を「ごはんをしっかり食べるからでしょう」と話しているという。
4月になり暖かくなると、週に1回外出。職員に付き添われて、車いすで近くを散歩し、コンビニなどにも立ち寄るという。
■木村次郎右衛門さんも「元気」
一方、男女合わせた世界最高齢の木村次郎右衛門さんの近況は-。
昨年末、脱水症状を起こして入院したが、京丹後市によると、現在体調は安定しており、口調はしっかりしているという。大川さんより約11カ月早い明治30年4月19日生まれだから、約1カ月後に116歳の誕生日を迎える。
木村さんも一番の楽しみは1日3度の食事で、長寿の秘訣は「小食を心がけ、腹は八分目」。孫14人、ひ孫25人、やしゃ子13人に恵まれ、周囲から長寿を祝福されると「サンキューベリーマッチ」と笑顔を浮かべるなど、長寿を満喫している。
木村さんは平成21年6月に「日本最高齢の男性」となり、23年4月には「世界最高齢の男性」にギネス・ワールド・レコーズから認定された。さらに同年12月に「日本最高齢」、24年12月には「世界最高齢」となった。史上最長寿男性の記録も更新中で、男女を通じた史上最高齢記録(122歳)に向かっている。
京丹後市や京都府が、木村さんが普段食べているものを参考にした「長寿食メニュー」の開発に予算案を計上するなど、木村さんの長寿をPRする取り組みも本格化。記録更新への周囲の期待も高まっている。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20130309559.html