資生堂は、動物実験代替法(以下、代替法)に基づく安全性保証体系を確立し、これにより2013年4月から開発に着手する化粧品・医薬部外品における社内外での動物実験を廃止します。なお、社会に対して安全性の説明をする必要が生じた場合※1は除きます。本件については、2013 年2 月28日開催の取締役
会において決定しました。
※1 市場にある製品の成分に関して、改めてその安全性を証明する必要が生じ、そのための選択肢が動物実験しかない場合や、一部の国において化粧品の安全性保証に動物実験が不可欠となっている場合。
経 緯
当社は、資生堂という社名に込められた、「地球の恵みに感謝し、新しい価値を生み出す」ことを基本として事業活動を行ってきています。そのなかで、全ての製品について高い安全性を保証することを最優先しています。安全性の確認にあたっては、できる限り動物実験を実施しないようにするとともに、代替法の開発
を積極的に推進してきました。一方、世界的に自然志向や動物愛護の考え方が広がるなか、動物実験廃止の取り組みに最も先進的な欧州では、2013 年の廃止を目指すEU化粧品指令※2が制定されました。
こうした背景のもと、当社が目指す人も地球も美しく共生する持続可能な社会に向けて、「お客さまに安心して化粧品をお使いいただけるよう安全性を厳格に守りながら、動物愛護の観点から化粧品における動物実験の廃止を目指す」ことを 2010 年 3 月に宣言しました。
その後、代替法をはじめとする安全性保証の開発をより積極的に進めることに加え、2011 年3 月には社内での動物実験を廃止しました。一方、有識者・学術関係者・動物愛護団体などのステークホルダーと、化粧品の動物実験廃止に向けて意見交換を行う場として立ち上げた「化粧品の成分の動物実験廃止を目指
す円卓会議」を、2010 年 6 月から 2013 年 1 月までに 5回開催し関係者との議論を深めてきました。
このような動物愛護と安全性を両立させる取り組みを推進してきた結果、このたび「情報による保証」「代替法による保証」「ヒトによる最終確認」を組み合わせた動物実験を用いない新たな安全性保証体系を確立しました。
※2 EU化粧品指令(第 7 次改正): 化粧品に関する動物実験の禁止を定め、2003 年 3 月に発効。①EU域内での動物実験の禁止(製品:2004 年 9 月までに禁止、原料:2009 年 3 月 11日以降は禁止)。②EU域外を含め動物実験した製品や、同原料を配合した製品は、2009 年 3 月 11 日以降EU域内で販売禁止。ただし、代替法が確立していなかった生殖発生毒性試験等については、改正指令発効から 10 年後の2013 年 3 月 10 日まで猶予。
今後の取り組み
当社は、安全性保証の信頼性をより一層高めるべく引き続き有効な代替法の開発を継続するとともに、代替法が各国・地域の法制度において正式な実験方法として認可されるよう、工業会活動などを通じて積極的かつ強力に各国の行政機関に働きかけていきます。
また、お客さま意識の多様化とグローバル化が加速するなかでの化粧品開発においては、お客さま視点での感性・使用感・効果感をより一層追求し、市場競争力のある新たな価値開発に総合的に取り組んでいきます。
<補足資料>
新たな安全性保証体系について
当社は、原料の安全性保証として「経皮吸収性」「皮膚一次刺激性」「皮膚感作性」や「光感作性」など11 項目を評価しています。このたび動物実験を用いずに、「情報による保証」「代替法による保証」「ヒトによる最終確認」の 3 ステップにより原料の安全性を保証する体系を確立しました。本体系の科学的妥当性や
社会受容性については、外部有識者の意見を踏まえました。この安全性保証体系は、今後も外部有識者の意見を取り入れ、さらに進化させていきます。
•情報による保証
社内で蓄積してきた安全性データベース、および化粧品に限らず医薬品や化学品を含む国内外の安全性データベースをもとに、化学構造や物理化学特性、生物学的反応などを総合的に解析して原料の安全性を評価します。
•代替法による保証
新たに開発した細胞や人工皮膚などを用いた試験方法(in vitro)や化学構造による安全性予測システム(in silico)を複数組み合わせることにより、全 11 項目の安全性を高い精度で評価することが可能となりました。
•ヒトによる最終確認
代替法により安全性が確認された原料は、個人差などを確認するためボランティアパネルによるパッチテストを行ないます。さらに原料の特性に応じて、医師管理下で連用試験やヒト繰り返しパッチテストやスティンギングテストなどを実施し、安全性の最終確認を行ないます。
これら3ステップの保証結果から、当社の安全性評価のエキスパートが総合的に評価し、原料の使用可否、安全な配合量を決定します。
当社製品は、今後もこれまでと同様に、厳しい安全性評価をクリアした原料のみを使用していきます。
http://group.shiseido.co.jp/releimg/2133-j.pdf