[ カテゴリー:医療 ]

40歳以上の女性は全員、年に1度のマンモグラフィーを受けるべきか

乳がんは女性の主な死因の1つとなっている。だが、どのくらいの頻度で検診を受けるべきなのか。

乳がんの検診は医療分野において最も議論の多い問題の1つだ。医学界では、年に1度のマンモグラフィー(乳房X線撮影)は必須であり、40歳以上の女性は毎年受けるべきだとの長年の見解に同意する意見が大勢を占めている。そのようにすれば、異常を検知し、早期に対処できるからだ。

だが、検査は言われているほど有益ではない、との反対意見も増えている。ますます効果的な治療法が出てきているため、早期発見の必要性は薄れている、というのがその理由だ。さらに、検査では誤った診断結果が出ることも多く、また健康上問題のないがんまでもが過剰に検出され、本人に不必要な不安をかき立てるのみならず、不必要な治療までもが行われることもあるというのもその理由だ。

乳がん撲滅機構ブレストキャンサー・ドット・オルグの理事長兼創設者で、ランケナウ医療センター(ペンシルベニア州ワインウッド)の乳房健康支援と乳房放射線治療部門の責任者を務めるマリサ・ワイス氏は、年に1度のマンモグラフィーは必要だと主張する。

一方、年に1度の定期検査に反対意見を表明するのは、健康政策と臨床診療に関するダートマス研究所の医学部教授を務めるギルバート・ウェルチ氏だ。同氏は 『Overdiagnosed: Making People Sick in the Pursuit of Health. 過剰診断:健康の追求が人を病気にする)』の著者でもある。


年に1度の検診は必要:がんの早期発見は完治確率を高める(マリッサ・ワイス氏)

乳がんは女性が最も発症しやすいがんだ。病気を早期に発見し、完治の確率を高めるには、40歳から毎年マンモグラフィーを受けるのが最善の方法だ。

2012年に世界で新たに乳がんの診断が下された件数は約130万で、その割合は今後30年で倍になる見通しだ。

朗報もある。手術や放射線治療法、化学療法の大きな進歩のおかげで、乳がん患者の生存率は大幅に向上している。また、診断手法や治療法も以前より負担が軽くなっている。

だが、そうした新たな治療法の恩恵を受けるには、がんを早期に発見する必要があり、そのためには定期的にきちんとした検診を受ける必要がある。


死亡率の大幅な減少

実験では早期検査の大きなメリットは示されていない、と批判する向きもある。だが、発表論文のほとんどは、診断方法や治療法が今よりはるかに遅れていた時代に収集された古い数字を使用している。また、論文の内容は非常に偏っており、それが結果をゆがめることにもなっている。

そうした限界があるにもかかわらず、最近発表された論文では検査が生存率に及ぼす効果が示されている。スウェーデンで行われた実験で、定期検査に招かれた女性グループとそうでないグループとを比較したところ、29歳以上の女性については、定期検査に招かれていた人の方がそうでない人よりも乳がんで死亡する割合が31%少なかった。

アフリカ系やユダヤ系の米国人女性といったさまざまなリスクパターンがより大きいサブグループで構成される米国では、現代の検査技術を使用して実験を行えば、さらに良い結果が出る可能性もある。

さらに、40歳から毎年マンモグラフィーを受診するという現行のガイドラインを順守している米国女性は約半数しかいないことを考えてみてほしい。さらにもっと多くの女性が毎年検査を受けるようになれば、その成果は想像に難くない。


年に1度の検診は不要:メリットは小さいが、コストが高くつく可能性も(ギルバート・ウェルチ氏)

マンモグラフィーは任意で受けるものであり、公衆衛生上の義務ではない。

われわれは過去数十年、「検査は命を救う」と聞かされてきたが、一方で検診を受ける必要のない理由がある可能性については聞かされてこなかった。検査は微妙な判断を要する、というのが実際のところだ。つまり、そのメリットとデメリットのバランスは微妙であり、人によって感じ方は異なる可能性がある。

まずメリットからみてみよう。数字をよく見てみると、検査のメリットは言われているほど単純に大きくはないことが分かる。最も確実なデータのある50歳の女性を例にみてみると、今後10年に乳がんで死亡する確率は約1000人に4人だ。年に1度のマンモグラフィーでその数字は1000人に3人の割合に減少する可能性がある。

言い換えれば、1人が乳がんで死亡するのを防ぐために、1000人の女性が10年間検査を受け続ける必要があるということだ。しかも、これは乳がんによる死亡率を検査で25%低下できる、という非常に楽観的な前提に基づいている。私を含め、検査で低下できる死亡率の割合は10%に近づいていると考える研究者は増えている。だとすれば、1000人が検診を受けることで救える命はわずか0.4人ということになる。

つまり、こうも言える。50歳の女性1000人に10年間検査を行ったとしても、その恩恵を受ける人数は0~1の間だ。乳がんによる死亡リスクは年齢とともに上がるため、その数字は60歳ではもう少し大きくなり、40歳ではもう少し小さくなる。

私が引用している数字は時代遅れであり、治療法の進歩を反映していない、と批判する向きもある。治療法は向上しているとの意見には私も同意する。私が検査のメリットは小さいとみる理由もそこにある。病気をより効果的に治療できるのであれば、早期に発見することはそれほど重要ではない。例えば、われわれは肺炎の検診は行っていない。それはほとんどの肺炎は治療可能だからだ。

誤診の可能性

これまで述べてきたのはメリットだ。だが、検査が1000人のうちわずか1人にしか役立たないのだとすれば、その他999人はどうなっているのか。米国では、10年間の検査でだいたい200~500人が誤診を受けている。うち70~190人は生体検査によって誤診であることが明らかにされているが、結局明確な結果が得られない人も何人かいる。

マンモグラフィー検査の結果を確認する放射線医師。検査のリスクは見逃されがちだとの主張もある

あまり知られていない検査のデメリットに過剰診断がある。これは、がんを告知されたものの、それが何の症状も死ももたらすには至らないケースだ。10年間検査を受けている女性1000人のうち、4~10人は一切健康に支障をきたさないがんで治療を受けている。つまり、検査によって、結果的に不必要な手術や化学療法、放射線治療を受ける女性が出ているということだ。

実際、乳がんがこれほど「一般的」である理由の1つは、検査を過剰にするあまり、診断ミスが発生しているためだ。全体的にみて、検査で発見されたがんの75%~90%が過剰診断か、後で発見されたとしても、問題なく治療されていたケースのどちらかだ。

乳がんによる死亡を防げることは重要なメリットであり、誤診や過剰診断、過剰治療よりもそのメリットの重要性は大きい。だが、メリットよりもデメリットがもたらされる可能性の方がはるかに高い。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324903404578313441342573554.html?reflink=Goo&gooid=nttr

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