スライサーは、野菜をスライスするために使用する調理器具である。国民生活センターでは『調理器具の安全性 その2「スライサー」 (2009年8月6日公表)』でスライサーを使用する際の手指のけがの危険性について情報提供を行ったが、PIO-NET(注1)には公表後も危害事例が21件(2009年8月以降受付、2012年12月末登録分)、また、医療機関ネットワーク(注2)にはけがの事例が2010年12月以降に43件(2010年12月~2012年12月伝送分)あり、依然としてスライサーでけがをする事故が起きている。
スライサーでのけがは指先等を削ぎ落とすことになり、包丁等によるけがよりも重症となり治癒しづらい。
一方、けが防止のためには安全ホルダー(注3)を使用することも有効であると考えられる。しかし、「指を保護する安全ガードや野菜を受けるケースなどがあれば一緒に購入しようと思っていたが、商品は見当たらなかった。」「野菜が小さくなったら使用する安全ホルダーが付属していたが、まだ半分程度の大きさだったので使用しなかった。」など、安全ホルダーが付属していなかった事例や、使い勝手が悪くて安全ホルダーを使用しなかった事例が見られた。
そこで、スライサーについて安全ホルダーの付属状況の調査や使用性に着目したテストを行い、消費者へ情報提供することとした。
- (注1)PIO-NETとは、国民生活センターと全国の消費生活センターをオンラインネットワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積しているデータベースのこと。
- (注2)医療機関ネットワークとは、消費生活上において生命または身体に被害を生じる事故に遭い医療機関を利用した患者から情報を収集し、注意喚起などに活用することを目的としている事業。消費者庁との共同事業であり2010年12月より情報収集を開始した。
- (注3)手指のけがを防止するため、スライスする時に野菜を保持する補助具。“指ガード”や“野菜ホルダー”と呼ばれることもある。
市販されているスライサーの安全ホルダーの付属状況調査
- 単品で売られている88銘柄中、安全ホルダーが付属していたのは54銘柄(約6割)に留まった。
テスト結果
安全ホルダーの形状
- 安全ホルダーの形状は板状の底面に付けられた多数の突起で野菜を保持する一般的な形状のほかに、中央の穴の中に小さくなった野菜を入れ保持する形状のもの、安全ホルダー内に付けられた串に野菜を突き刺して固定するもの、安全ホルダーの一部がスライドして野菜を挟み込むものなど様々であった。
安全ホルダーの使用性
- ほとんどの銘柄で野菜が小さくなったら安全ホルダーを使用することを薦めているが、小さくなった野菜を安全ホルダーで安定して保持できないこともあった。また、いずれの銘柄もすべての野菜を最初から最後まで安定してスライスできるものではなかった。
- 安全ホルダーの外側を持つ不適切な使い方が時々見られ、けがをするおそれがあった。
安全ホルダーに関する注意表示
- ほとんどの銘柄の取扱説明書には、野菜が小さくなったら安全ホルダーを使うように注意表示がされていたが、本体に表示があったのは1銘柄のみであった。
プレートのたわみによる危険
- V刃で厚み調整のできる銘柄はプレートのたわみが大きく、持っている野菜がより早く小さくなり手指が刃に近づきやすくなり危険であった。
消費者へのアドバイス
- スライサーを購入する際は安全ホルダーが付属しているものを選び、使用する際はスライサーも刃物であることに十分注意する。
- 現状、ひとつの安全ホルダーで全ての野菜に対応するのは難しいものの、野菜が小さくなったら、けが防止のため必ず安全ホルダーを使用する。
事業者への要望
- 野菜が大きいときから最後まで安定して使えるなど使いやすい安全ホルダーを付属させるか、様々な大きさの食材に対応したものを用意することを要望する。
- プレートのたわみが大きいものは、より小さくなるように改善を要望する。
情報提供先
- 消費者庁 消費者安全課
- 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ 製品安全課
- 消費者委員会事務局
- 社団法人日本DIY協会
- 日本チェーンストア協会
- 公益社団法人日本通信販売協会
- 日本百貨店協会
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130207_1.html