突然、手足の動きが不自由になったり、ろれつが回らなくなったりする脳卒中。長い間日本人の死因第1位だったが、1970年代から減少し、現在は死因の第4位となっている。しかしその年間死亡率は人口10万当たり約97人と高く、年間約12万人が亡くなっている。さらに寝たきりになる原因疾患は脳卒中が最も多く、約3割を占めている。独協医大の竹川英宏准教授に聞いた。(聞き手・高橋健治)
--脳卒中とはどんな病気ですか
脳卒中は脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の細い血管が破れる脳出血、脳の表面にある太い血管にできた動脈瘤が破裂するくも膜下出血があります。いずれも重篤な症状を残すことがあるので、救急車などを利用して一刻も早く病院で受診することが大切です。
--脳卒中の症状は
脳梗塞や脳出血は突発する神経症状が特徴的です。顔、腕、足といった半身の脱力感やしびれ、ろれつがうまく回らない構音障害や、会話が理解できない、言葉を全く発しないといった失語症、片側の視野が欠ける視野欠損、片眼だと普通なのに両眼で見ると物がだぶる複視、めまいやうまく歩けなくなったりする平衡障害といった症状が突然生じます。くも膜下出血では、突然始まる経験したことがないような激しい頭痛があり、吐き気や嘔吐を伴いやすい。
また脳卒中では意識が悪くなることもあります。海外でよく知られている脳卒中を疑うキーワードに「FAST」があります。「顔(Face)、腕(Arm)、言葉(Speech)の異常があったら、症状が出現した時間の確認と、一刻も早く病院へ!(Time)」の意味です。脳卒中は早期治療が必要なので、「時は金なり」ではなく、「時は脳なり(Time is Brain!)」とよく言っています。
また脳梗塞と同じような症状が出現して、数分から1時間ほどで消失する一過性脳虚血発作は、その後本当の脳梗塞を起こしやすいので、症状が消えてもすぐに病院を受診するようにしてください。
--脳卒中はどんな治療をするのですか
脳梗塞の場合は、rt-PAという薬を用いた血栓溶解療法を行います。この治療は、脳の血管を閉塞している血の塊を溶かし、血管を再開通させる治療で、4割弱の人はほとんど症状が消失します。ただし、この治療は症状出現から4時間半以内でしかできません。最近では、この治療で再開通が得られなかった場合、カテーテルという器具を使用して再開通させる方法もあります。
脳出血は、出血がとても大きい場合は外科的に血の塊を取り除いたりします。くも膜下出血では動脈瘤が再破裂しないように、手術やカテーテルによる治療を行います。
いずれにしても、治療の選択にはさまざまな検査が必要で、症状が出現して、できれば2時間以内、遅くても3時間半以内には病院に到着してもらえればと思います。1分でも早く治療することが救命と後遺症の軽減につながります。まさに「Time is Brain!」です。
--脳卒中になりやすい人はいますか
高血圧や糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)、心房細動(不整脈の一種)がある人はなりやすい。生活習慣で喫煙、酒の飲み過ぎ、肥満、塩分や脂肪分の取り過ぎ、運動不足の人も注意が必要です。身内に脳卒中を発症した人がいる場合は、脳ドックなどで一度脳の状態や首の血管の状態をみておくと良いでしょう。
日本脳卒中協会(http://www.jsa-web.org)は、脳卒中予防十カ条を発信しているので、ぜひごらんください。生活習慣の改善や定期的な健康診断はとても良いのですが、朝だけ血圧がとても高い人もいるので、自宅での朝の血圧測定、そして脈の乱れをチェックすることは自分でもできるので、確認してみてください。
最後に、ご自身、身の回りの人に脳卒中を疑う症状があったら、すぐ病院。「Time is Brain!」をお願いします。
■竹川英宏(たけかわ・ひでひろ)昭和48年6月、さいたま市生まれ。独協医大医学部卒業。平成10年5月、同学部神経内科入局。17年9月、同科脳卒中部門長。24年4月、同科准教授。日本脳卒中協会副事務局長、栃木県支部事務長。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20130202515.html










