「マウスから作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、同じ遺伝情報を持つマウスに移植すると拒絶反応が起きた」とする米カリフォルニア大の報告(11年)に関連し、日本のグループが、「同様の実験をしても、拒絶反応はほとんど起きない」という異なる結果を発表した。10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に論文が掲載される。
米グループの報告は、未分化iPS細胞の移植で、再生医療で想定されるiPS細胞を分化して作った組織移植とは異なる。それでも、「患者自身のiPS細胞は移植しても拒絶反応が起きない」との定説を疑問視した論文がネイチャーに掲載されたため、注目されてきた。
今回の発表は、放射線医学総合研究所(千葉市)の荒木良子室長と鶴見大(横浜市)のグループ。
米グループと同じく、マウスの体細胞で作った未分化のiPS細胞を別のマウスに移植し、拒絶反応が起きれば移植部位に寄ってくるリンパ球の数を調べた。すると、無視できるほど微量だった。
一方、この未分化のiPS細胞から成体マウスを作製。そこから採取した皮膚の移植では、約10カ月間はまったく拒絶反応がないことも確かめた。
荒木さんは「完全に分化した組織で拒絶反応が起きる可能性は、数年、数十年後に何か起きるかもしれないというほど低い。未分化iPS細胞が残らないようにする技術開発が重要」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130110-00000014-mai-sctch