[ カテゴリー:生活 ]

お金を預けたまま忘れたらどうなるか

PRESIDENT 2012年12月3日号 掲載

■理論的には預金の時効は「5年」

12年2月、政府は休眠口座を震災の復興財源に充てることを検討していると発表した。休眠口座とは、金融機関に預金を預けたまま長年入出金されず、放置されている口座のこと。休眠口座に眠るお金は銀行のものになっているという報道もなされたが、はたして本当だろうか。

法的にいうと、銀行預金は預金者にとって債権、銀行にとって債務にあたる。債権などの財産権には消滅時効があり、一定期間、行使しなければ権利が消滅する。債権は10年間行使しなければ消滅し、債権と所有権以外の財産権は20年間行使しないと消滅する(民法第167条)。

債権の中でも、商事債権(商行為によって生じた債権)は消滅期間が短く、5年間行使しなければ消滅する(商法第522条)。銀行は商法でいうところの商人であり、銀行預金は商事債権にあたる。そのため法律上は、権利を5年間行使しないと時効が成立する。一方、同じ金融機関でも、信用金庫や労働金庫、信用協同組合などの共同組織系は商人ではないため、消滅時効は通常の債権と同じく10年間だ。

時効期間は預金口座にお金を預けた時点から計算されるが、その後に預金者が入出金すれば銀行が債務を承認したことになり、あらためて時効期間が始まる。最後の入出金から5年間放置すると、預金者は預金を引き出す権利を行使できなくなる。

ただし、これは理論上の話にすぎない。消滅時効を迎えた債権は実務上、債務者が援用(時効の効果を得るという意志表明)することによって消滅する。つまり時間が経てば自動的に預金を引き出せなくなるのではなく、銀行が「時効なので支払いません」といってはじめて債権が消滅するわけだ。ところが銀行は基本的に時効の援用をしない。そのため、預金口座を5年以上放置した後でも預金者は自由にお金を引き出せる。

銀行が時効を援用するケースは限られている。1990年代のバブル崩壊以降、けっこうな数の金融機関が淘汰されて他の金融機関に吸収された。その混乱の中で、淘汰された金融機関で預金をしていた預金者が、定期預金証書を紛失するなどのトラブルが起きた。預金者は「あの信用組合で預金をしていた」と主張するが、合併先の金融機関側はそれを確認できない。そこで時効を援用した例がいくつかある程度だ。

では、なぜ銀行が休眠口座の預金を自分のものにしているという誤解が広まったのか。それは会計上の債務と法律上の債務の考え方に違いがあるからだ。企業会計には、引き出されていない預金を債務として扱うのはおかしいという考え方がある。そのため会計上は資産として扱うことになり、銀行のものになったように見えてしまうのだ。放置した預金が銀行のものになっていないことは、実際に休眠口座を利用すればわかる。とくに手続きすることなく、普通に預金を引き出せるはずだ。

問題は、本人も休眠口座の存在を忘れている場合だろう。銀行に名前や生年月日を伝えて問い合わせれば、自分の口座があるかどうかは調べてもらえる。ただし、それには口座を作った支店の特定が必要になる。銀行の本部にはペイオフに備えて各支店の口座を名寄せするシステムが構築されているが、休眠口座の確認には活用できないという。休眠口座を確かめたければ結局、心当たりのある支店に問い合わせるしかない。

どこで口座を作ったのか思い出せなければ、口座は永遠に残り続けることになる。自分の口座を“永眠口座”にしたくなければ、引っ越しなどの人生の転機ごとに口座を整理して、利用していないものは解約したほうがいいだろう。

http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/president_8096.html

Facebook にシェア
[`tweetmeme` not found]

コメントする

Facebook にシェア
[`tweetmeme` not found]

団体理念  │  活動展開  │  団体構成  │  定款  │  プライバシーの考え方  │  セキュリティについて  │  事業  │  メディア掲載  │  関連サイト  │  お問い合わせ

copyright © JMJP HOT TOWN Infomaition Inc. All Rights Reserved.   NPO法人 住民安全ネットワークジャパン

〒940-0082 新潟県長岡市千歳1-3-85 長岡防災シビックコア内 ながおか市民防災センター2F TEL:0258-39-1656 FAX:020-4662-2013 Email:info@jmjp.jp