痩せるのは難しいかもしれないが、せめて、お腹周りくらいスッキリしたい…と口にする人は少なくない。かくいう私も、ほとんど毎晩お酒をいただくし、ジムも筋トレも好きではないし、どう転んでもストイックな人間とは言い難い。でもお腹周りだけは、あのふてぶてしい肉をつけないように意識している。
それは、以前、まったく年齢を感じさせない女性たちとお食事をしたときの記憶によるもの。食事中に見ていたテーブルの上の美しい姿と、立ったときの胸から下の姿とのギャップにショックを受けたのだ。年齢はお腹にも出る…。そのことを知った瞬間だった。
「年のせいかお腹周りのお肉が落ちなくて」というクライアントは非常に多い。もちろん、顔にだって年は出る。けれど、顔の造作がある程度は神様が決めたものだとしたら、自分が努力できるのはお腹だ。
あなたの周りにも、いないだろうか?若いときはモテたあの男性が、スーツを脱いだらすごいお腹になっている、なんてこと。お腹のたるみは気のたるみ。12月の忘年会シーズンを前に、すでにベルトの穴が“いつも”よりもひとつ横にずれていたら…早速、今日から気をつけよう。
「年をとったから仕方ない」で片付けていないか 痩せ型の人もメタボ腹になる理由
たとえば、「大好物は揚げものです。ビールも飲むし、白米も食べます。ごはんを残したらいけないと言われていたので、ラーメンの汁も残さず完食しますし、マヨネーズをかけて食べるとなんでもおいしく感じます」…そんな人のお腹がぼてっとしていても、誰も不思議には思わないだろう。
でも、朝ごはんに食べるのはシリアルと牛乳、コーヒーもしくはパンに野菜ジュース。昼は会社の近くでランチ、夜はそのときの予定次第だが、そんなにお酒を飲む方ではない…という、どちらかというと痩せ型の人が、お腹だけはぽっこり出ていただら、どう思うだろう。
もしも、「やっぱり年をとったから仕方ないな~」と思っていたら、そのもったいない考えは捨ててしまおう。これもまた、食べ方に原因がある。それはなにかというと、パターン化している朝食の内容だ。このように、朝に食べるのが火を使わないでも食べられる料理ばかりだったら要注意だ。体を温めないまま1日をスタートさせると、代謝はガクンと落ちてしまう。寒い日には体が縮こまるように、冷たいものばかりとっていると内臓だって動きが悪くなる。
でも、コーヒーは熱いじゃないか!と思うかもしれないが、コーヒーやバナナのような南国の食べものは体を冷やす性質があるともいわれている。一方、冬になると旬を迎える根菜は、身体を温める性質があるといわれているが、朝かられんこんのきんぴらや大根の煮物を食べたりするのは難しいだろう。そうしたら、せめて、いつも食べているパンに、ちょっと合わないと思っても、昨夜の味噌汁を足すくらいのフォローはしてほしい。
そして、どんなものを食べたとしても、身体があたたまった中で外出しているか「あー、寒い、寒い」と思って出かけているか、自分の身体に聞くようにしてほしい。ちょっと体がポカポカする食べ合わせ、それこそが内臓まわりの脂肪を燃やしやすくする食べ方なのだ。
さらに、朝食にパンやシリアルしか摂っていないということは、タンパク質が1食分足りない可能性が高い。お腹をひきしめるためには筋肉が欠かせないが、その筋肉を作るのはタンパク質だ。そして、若かりし頃に身に付けた筋肉は、ただ減っただけではなく、毎日少しずつ作りかえられている。さらに、筋肉細胞は体内でもっとも脂肪を燃やしてくれる役割を負っている。つまり、毎日朝食のタンパク質が欠けていたら、引き締める素が足りていないばかりか、脂肪の燃焼効率も下がって、余計にでぷっとしたお腹になってしまう。食べ過ぎなわけではないはずなのに、なぜかお腹まわりだけが出てきたんだよなー、と嘆く人は、まず朝食のスタイルから見直してみよう。
ヘルシーと思って食べる枝豆には 意外な落とし穴が
一方、朝はバランスよく食べているけれど、昼はいつもカレーや麺類、お好み焼き…そして、夜はなぜか居酒屋でビール飲みながらフライドポテト…なんていうのは、もう、これはなるべくしてなったお腹になるだろう。炭水化物や糖質を摂り過ぎれば、それはメタボ腹の世界へ飛び込んでいっているようなものだ。ビールにフライドポテトは百歩ゆずるとして、それを食べたら〆のごはんは抜く、などして、主食と芋・栗・かぼちゃのような糖質が多い野菜を摂り過ぎないようにしよう。
ただ、炭水化物大好きな人が、ちょっとヘルシーに、とつまみにせっせと枝豆を食べるのも、それはそれで気を付けた方がよかったりする。枝豆は、名前に豆が入るのでタンパク質源として期待してしまいがちだが(実際、タンパク質も含むが)、豆と野菜の両方の栄養的特徴を持った緑黄色野菜に分類されている。100グラムあたりでみると、枝豆のタンパク質は11.5グラム、炭水化物は8.9グラム。同じように酒の肴になる、さんまのお刺身のタンパク質が18.5グラム、炭水化物が0.1グラムであることを考えると、食べ過ぎ注意、という意味が伝わりやすいだろうか。
年季の入ったメタボ腹に効く 鶏ササミ、マグロ、きのこを食べよう
最近ちょっとお腹周りが気になるな~、レベルではなく、長年積み重ねてきた自負があるのであれば、肉体的な刺激も大事だろう。ならば、今日から腹筋を頑張るか?確かに、腹筋を鍛えることは必要だ。
とはいえ、身体をまっすぐに起こす腹筋では、横にぼてっとはみでたお腹がへこむことは期待できない。いわゆる、お腹の前、正面側を縦に走っているのは腹直筋だが、その両脇、左右の脇腹を覆っているのが腹斜筋。その腹斜筋は、外側の腹斜筋と内側の腹斜筋がたすきがけのように交差していて、上半身をひねるときに使われているものだ。そして、それこそがきゅっと引き締まったお腹をサポートしてくれるもの。いつもの腹筋に、身体をひねりながら上半身を起こすようにすると腹斜筋に刺激が入る。実際にしてみると、そっちの方がつらいので「なるほど、こういうことか」とわかってもらえるはずだ。
ただ、「やっぱり運動はちょっと…」と引き気味の人も少なくないはず。それならば、運動によって脂肪を燃やす以外の方法を考えよう。脂肪を燃やすというと、一時期流行った辛味成分、カプサイシンが有名だが、摂りすぎると慣れて効力が薄れる場合もあるし、辛くておいしいものは、味が濃い物、脂っこいものが比較的に多いので積極的に!とは言い難い。
今、意識してほしいのは、ナイアシンだ。三大栄養素の代謝に関わるナイアシンはビタミンB群の一種で、コレステロールや中性脂肪を分解し、脂質の代謝を促進させる働きをもっている。しかも、ナイアシンは、脂質が控えめな食材に含まれるものうれしいところ。鶏ササミや鶏胸肉、マグロやカツオが代表選手だが、まいたけやしいたけといったきのこ類に含まれる。前者の魚肉に頼って食べ過ぎてしまうのは注意ではあるものの、きのこ類なら毎日頼っていても大丈夫だ。
ちなみに、きのこは1パックが大体100グラム程度。きのこはナイアシンだけではなく食物繊維やミネラルが豊富なうえに、カロリーがほとんどないから食べ過ぎの心配がない。(3食きのこだけ、という極端な食べ方がないことを信じて)1日に摂取する目標量は350グラムと言われているが、量と同じようにその内容も大切だ。前述した糖質の多い野菜350グラムと緑黄色野菜350グラムの効果はまったく異なるものだ。
まず、350グラムのうち、緑黄色野菜は150グラムとされている。バランスよく食べていれば、1日半パックでも良いと思うが、極端に野菜の摂取量が少ない上に、1人暮らしでそんなに野菜の種類を買えない、というときには、きのこ1パック食べてしまっても良いだろう。なぜならば、カロリーが多くて太っているわけではなく、野菜に多く含まれる食物繊維が少なくて太っている、というケースも多々あるからだ。
それにしても、なぜ、お腹周りだけは男女共通して気にするのだろう。くびれたウエストには女性らしさ、引き締まったお腹には男性らしさ。それぞれの異性としての魅力を感じるからだろうか。もちろん、お腹周りには、年齢だけではなく、生活習慣も出る。「だらしない毎日なんて過ごしていません!」と周りに伝えてくれるような体のラインでありたいものだ。
http://diamond.jp/articles/-/28382