電子書籍端末の本命と目される米アマゾン・ドット・コムの「キンドル」シリーズの一部機種が19日に発売される。書籍数が約5万点と米国などの100万点以上に比べて見劣りし、“価格破壊”も控えめなスタートだ。だが、端末は急速な普及が予想されるだけに、伸び悩んでいる日本の電子書籍市場を本格的な拡大基調に導く可能性もある。
19日に発売するのは電子書籍専用の「キンドル・ペーパーホワイト」(7980円)。12月に音楽やネット通販ができるタブレット端末も1万円台で発売する。
アマゾンがキンドル発売へ日本の出版社などと交渉を始めてから約2年。6月下旬に「近日発売」を告知した後も、実際の販売までに4カ月以上を要した。
時間がかかったのは、「コンテンツ(作品)がそろわなかった」(出版業界関係者)からだ。8月に参入したインドでは当初から120万点をそろえたとされ、日本の少なさは顕著だ。
背景には日本の書籍流通の複雑さがある。アマゾンなど電子書籍の運営会社が作家や出版社から直接作品を仕入れ、紙の本に比べ3~4割安い電子書籍を提供できる米国などに対し、日本は事実上、出版社が作家を囲い込み、印刷会社、取次会社を経て販売される。関連業界は、電子書籍運営会社に「収益が中抜きされる」(同)と警戒する。
このため日本の電子書籍サービスはいずれも書籍数が数万点にとどまり、価格も紙と同じか、少し安い程度。調査会社ICT総研の調べでは、平成23年度の電子書籍の市場規模は671億円と予想を下回った。
アマゾンも日本の商習慣を打破できず、書籍の価格は他サービスとほぼ横並び。楽天の「kobo(コボ)」など競合他社の電子書籍端末やタブレット端末の発売が相次ぐ中、「まず端末市場を活性化させ、コンテンツ拡充につなげる」(ICT総研の斉藤和アナリスト)戦略に転換した。
アマゾンは米国では電子書籍の販売数が紙の本を上回る。日本でも端末普及に伴い、電子書籍販売が伸びるのは確実。先に市場を広げ、書籍数の増加や人気作品の電子化を促す。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/communications/snk20121118099.html