自閉症の原因とされるたんぱく質の働きを制御する仕組みを、東京大の富田泰輔准教授(病態生化学)と岩坪威教授らのチームが解明し、18日付の米科学誌ニューロンに発表した。この仕組みはアルツハイマー病などの発症と共通点があり、さまざまな神経疾患の治療に応用できる可能性がある。
一部の自閉症患者の脳では、神経細胞に含まれる「ニューロリジン」というたんぱく質の量が1.5倍多いことが知られている。
チームはマウスを使ってニューロリジンの構造を調べたところ、一部が切断された状態になっていることを発見。はさみの役割を果たす物質を探し、アルツハイマー病の原因物質の形成に関連する「ADAM10」「γ(ガンマ)セクレターゼ」という2種類のたんぱく質が担っていることを突き止めた。
また、ニューロリジンが切断しにくくなるように操作すると、その量は操作前に比べて1.5倍程度増え、自閉症患者の神経細胞に近い状態になることが確認できた。さらに、てんかんの症状を持つマウスでは、はさみの切れが良すぎて、ニューロリジンの量が通常より6割程度に減っていた。
富田准教授は「正常な神経細胞では、2種類のはさみ役のたんぱく質が絶妙に機能することで、ニューロリジンが適量になっている。ニューロリジンを標的にした薬を開発すれば、さまざまな神経疾患の治療に役立つかもしれない」と話す。
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