若い世代に北朝鮮による拉致事件への理解を深めてもらおうと、拉致被害者、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の両親が18日、川崎市多摩区の明治大学生田キャンパスで、学生を対象に講演した。事件を知らない若者も増えた。風化を恐れる被害者家族や支援者は若年層の啓発に力を入れ始めている。
「すべての被害者を助けるため、みなさんが関心を持ち続けることが必要です」。講演で、めぐみさんの父、滋さん(79)は世論の必要性を訴えた。終了後には、学生食堂で、滋さんと母、早紀江さん(76)を囲んでの食事会が開かれた。「拉致されたのは日本人だけですか」と問われた早紀江さんは「全部で12カ国。一緒に集会を開いたりして協力しています」と答えた。
参加した理工学部4年の山坂旭成(あきなり)さん(22)は「講演を聴き、家族の苦しさを知った。家族も高齢になっているので、若い人が動かなくてはいけないと思った」と話す。
講演会は「若い世代の人に拉致事件を知ってもらい一緒に行動してほしい」と川崎市が初めて企画。しかし、120席のうち、学生はわずか30人程度だった。
「(学生が少ないのは)授業時間との兼ね合いもあったかもしれない。時間帯や場所を考えながら続けていきたい」と市の担当者。市内の別の大学にも同様の取り組みを広げる予定だ。
内閣府の今年6月の世論調査で、20代の72.2%が拉致事件の広報・啓発活動に「参加したくない」「どちらかと言えば参加したくない」と回答。全体の55.9%に比べ、参加意識の希薄さが目立った。20代が「参加したくない」と答えた理由の50%は「時間が取れない」、24%が「意義が分からない」だった。
拉致被害者を調べる「特定失踪者問題調査会」の村尾建児(たつる)専務理事(47)は平成20年から、労働組合「UIゼンセン同盟」の青年部を対象にした勉強会を始めた。35歳以下が中心で拉致事件を詳しく知らない人も多いが、「話を聞くことが『自分たちも何かできないか』と考えるきっかけになっている」という。
勉強会をきっかけに街頭署名活動を始めるなど効果も出つつある。今後、都内で署名活動を実施する計画。村尾さんは「関心を持った若い人が同世代に訴えることが必要。若い世代にも伝え続けなければいけない」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/education/snk20121019108.html