「団塊の世代」が65歳を迎える今年、65歳以上の高齢者人口が初めて3000万人を超え、全人口の24%となった。
一段と加速する高齢化への備えを、社会全体で急がねばならない。
平均寿命は、男性が今の79歳から2050年には83歳に、女性が同じく86歳から90歳に延びると予測されている。
「人生90年時代」の到来を見据え、政府は、新たな高齢社会対策大綱を閣議決定した。従来は社会保障制度の下で「支えられる」側だった高齢者が、意欲と能力があれば「支える」側に回るよう求めたのが特徴だ。
確かに、今の高齢者は、かつてのお年寄りに比べ、はるかに若々しいと言える。
65歳の人の平均余命は、男性19年、女性24年だ。それぞれ終戦直後の約2倍に延びた。文部科学省による体力テストでも、高齢者の体力は年々向上している。
高齢者を一律に弱者とみてきた旧来の意識を、変えていくことは必要だろう。
働く意欲が高い高齢者は多い。60歳以上の男女を対象にした内閣府の調査では、65歳を超えても働きたい人は7割を超える。
高齢社会対策大綱でも、「生涯にわたって就業や社会参加の機会が確保される社会」を目指すことを掲げた。
高齢者が職に就くことで収入が増えれば、消費や税収が増える。経済の活性化はもちろん、社会保障の財源確保にもつながる。
それには、70歳以上の人を雇用する企業が、今以上に増える必要がある。高齢者が子育てや介護のボランティアとして活躍できる場を確保することも求められる。
一方で、支えが必要な高齢者も増えていく。団塊世代が75歳以上になる2025年ごろまで、介護や医療の需要は急増し続ける。介護体制をどう整えるか、これからの10年余が正念場となろう。
高齢者が増える反面、少子化に伴って、現役世代の人口は減り続ける。1人の高齢者を支える現役世代の数は、現在の約3人から、50年後にはほぼ1人となる。
現行の社会保障制度では持ちこたえられないのが、明らかだ。
民主、自民、公明3党の合意に基づき設置される予定の社会保障制度改革国民会議で、持続可能な社会保障制度について議論を深めるべきだ。
高齢期も可能な限り自立できるよう、一人ひとりが「人生90年時代」の生き方を考えたい。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/medical/20120930-567-OYT1T00795.html