障害者虐待防止法が10月から施行される。すべての市町村が虐待防止センター機能を持ち、相談を24時間受け付ける。ひどい虐待は毎年各地で明らかになっているが、潜在的な虐待はもっと多く、虐待に発展しかねない権利侵害の「芽」は至る所から出てくる。踏みつけられても声を上げられない人を救うための制度だ。しっかり機能させてほしい。
法施行に向けて各地で行われてきた研修を見て気になることがある。この法律は閉鎖的な雇用の場や入所施設でのひどい虐待事件が出発点であり、障害者が必死に訴えても公的機関が取り合おうとしなかった反省を込めて議員立法で作られた。ところが、いざ施行される段になると家庭内虐待に照準が合わされ、施設や雇用の場はどこか二の次にされているように思えてくる。
原因の一つは、通告を受ける市町村が単独で調査できるのは家庭内虐待だけで、施設は指導監督権限のある都道府県と協力し、雇用の場は都道府県労働局と協力して調査すると法律で定められたことにある。すでに施行されている児童虐待防止法や高齢者虐待防止法の主なターゲットが家庭内虐待であることも影響しているのだろうが、直接相談を受ける市町村に比べ、特に労働局は必死さが伝わってこない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120930k0000m070077000c.html