日本の公共放送局であるNHK (日本放送協会)。その財源のほとんどをまかなっているのが、受信契約者から徴収する負担金「受信料」だ。そしてこの10月、NHKは受信料の値下げに踏み切った。月額最大で120円ダウンとなる今回の措置で、事業収入は前年度比1.7%減の6,489億円。その結果、一般企業の利益にあたる「事業収支差金」は、2年後の2014年までは赤字となる模様だ。
この受信料を巡っては、さまざまな問題点が指摘されている。そのひとつに、事業所の受信料がある。 放送法によると、受信料とはテレビを有する者に課せられた義務であり、NHKの番組を視聴する、しないに関わらず支払うべきものと明記されている。ただし不払いに対する罰則規定はない。また受信契約は、世帯単位で結ぶもので、個人の場合であれば、住居に複数のテレビを有していても1契約となる。
ところがこれが個人宅以外となると、テレビが設置された部屋ごとの契約となる。したがって、ホテルなどで客室数の多い施設では莫大な受信料が必要となってくる。そこでNHKでも、2009年より1台目のテレビは通常料金とするが、2台目以降は半額に割り引く「事業所割引」制度を新設し、費用軽減を図った。ところが同割引は、導入の前年である2008年の全国旅館生活衛生同業組合連合会の提言とはかけ離れた内容だった。
全国旅館生活衛生同業組合連合会の提言は、英国のBBCが採用する最初の15台までを1契約、以降5台を1括りとして契約するものだった。提言では具体例も示されている。仮にテレビの保有台数が15台ある宿泊施設であれば、BBCの方式であれば1契約とカウントされ、当時の受信契約金額で年間2万8,080円。一方、NHKの事業所割引では年間22万4,640円。金額の違いは一目瞭然、あまりにもかけ離れている。
また9月10日には、NHKより受信料未払いで約5億5,000万円の賠償を求められている東横イン(本社:東京都大田区)の第1回目の口頭弁論が東京地裁で行われた。東横イン側としては、空室などの受信料は無効だと、NHKとは全面的に争う構えだ。
受信料徴収には、頑として持論を貫くNHK。一方で、相次ぐ不祥事や、組織としての在り方などが批判され、受信料の不払いは一向に減る気配はない。問題山積のNHKにとって、抜本的な改革実現や信頼回復には、まだまだ時間と努力が必要なのかもしれない。
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