実りの秋。いよいよ新米の季節の到来だ。炊きたての艶と、口に含めば広がる甘み。どんなごちそうよりもぜいたくに感じる人も多いのでは。この時期だからこそ、お米をどうやって、おいしく食べるか。うまみを引き出す炊き方にも、とことんこだわってみよう。(中山忠夫)
「今年は米どころの新潟や東北の天候条件も良く、品質も安定しています」
米穀店の全国組織「日本米穀小売商業組合連合会」(日米連)の相川英一事務局長はこう話す。
味の好みや料理に合わせた米選びにこだわりたいという人は、日米連が認定するコメの専門家「お米マイスター」が頼りになりそうだ。
組合員の店主や店員ら全国で約4400人を数え、日米連のサイトで最寄りの「マイスターのいる店」も探せる。足を運べば最適な産地や銘柄などをアドバイスしてくれるはずだ。
羽釜で格別な味
「昔ながらの土鍋や、かまどで使う羽釜で炊いたご飯はやっぱり格別だね」
そう語るのは「新宿割烹 中嶋」(東京都新宿区)店主の中嶋貞治さん。
中嶋さんは、北大路魯山人が開いた「星岡茶寮」の初代料理長を祖父に持ち、その魯山人はコメのおいしさを「うまいものの極致」と表現した。魯山人のこだわりぶりも「一粒ずつ丹念に選別して大きさをそろえ、均一に炊きあげたほど」と中嶋さんはいう。
「料理の締めに出すご飯がおいしくなければ、料理の全体が台無しになってしまいます」。京懐石「左京ひがしやま」(東京都中央区)の料理長、阿部善一さんは、本格派の“かまど炊きご飯”にこだわる。のれんをくぐれば、土を固めて築いたかまどに、土鍋の羽釜が目に入る。阿部さんは「何よりもご飯のハリと艶が違います」と話す。
“土鍋釜”も搭載
では、家庭の炊飯器でおいしく炊くにはどうすればいいか。お米マイスターで、米穀店「米のまきの」(千葉県船橋市)を経営する牧野基明さんがアドバイスしてくれた。
最近では、かまど炊きの原理をそのまま再現した高級炊飯器も登場。天然の土を焼き固めて作った“土かまど”と“土鍋釜”を搭載したというから驚きだ。
土鍋圧力IH炊飯ジャー「THE 炊きたて」(タイガー魔法瓶、希望小売価格は税込み14万7000円)がそれ。炊飯器で初めて本体内部をかまどのような土壁構造にした。従来の金属釜に比べ100度以上高い300度の高温で、土鍋の内釜を包み込むようにして炊き上げるという。
「土ならではの蓄熱効果で沸騰を持続させ、炊いている最中のコメは土鍋釜の中を盛んに対流し、まんべんなく熱が加わります。最後は高温でギュッと“炊き締め”。余分な水分も飛んで一粒一粒がふっくらして、もちもちした粘りがあるのにべとつかず、しっかりとした食感が出ます」。同社開発担当の金丸等さんはこう話す。
牧野さんは新米の楽しみ方について「同じ県産の同じ銘柄でも、取れた地域によって土壌も水も違うので味わいも当然変わってきます。いろいろな地域の味の食べ比べなどもしてみては」という。食育の普及活動にも取り組む中嶋さんは「ご飯を炊くということは、家庭で作って食べる『内食(うちしょく)』の機会が増え、家族だんらんにもつながるはず」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120921/trd12092108560005-n1.htm
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