■食物繊維豊富なメニュー注目
ビジネスマンの食生活は、とかく乱れがち。せめて昼食で一日の食事バランスを整えてほしいと、食物繊維などを多く含んだメニューを出す店がオフィス街の東京・丸の内地区でも登場している。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防にも効果が期待できるという。仕掛け人は「大人の食育が今、求められている。丸の内から全国に発信したい」と願っている。(山本雅人)
◆野趣あふれた食
今春、千代田区丸の内1丁目に新しくできた高層のオフィスビル、丸の内永楽ビルの地下街には、いくつもの個性的なレストランがオープンした。連日、行列のできるほどにぎわっている一つが、農園カフェ&バル「ダイチ・アンド・キーツ」だ。
健康志向の女性客が多いが、中高年の男性客の姿もある。お目当ての食材は雑穀だ。温野菜や生野菜のプレートに雑穀ご飯、あるいは無添加のベーコン、卵をのせたプレートに雑穀を練り込んだワッフルというメニューが人気という。いずれにも雑穀入りスープ付きだ。
「お昼には、ぜひ野趣(やしゅ)あふれた食事をとってもらいたい。よくかんで雑穀や野菜をとればメタボ予防にもいいでしょう」と店長の町田正英さんは語る。
同じフロアには、かやくご飯などを選択できる和食店や、葉野菜で肉やご飯を包む韓国料理を味わえる店もあり、食物繊維をたっぷりとれるコンセプトの店が客を引きつけている。
◆大人の食育
こうした飲食店を見つけ、誘致をした仕掛け人は三菱地所(千代田区)の都市計画事業室マネジャーの平本真樹さんだ。
ビジネスマンの昼食といえば、時間のなさから、麺類やどんぶり物をかきこむことも少なくない。夜も接待や付き合いで飲みに行けば食生活のバランスが乱れ、それがメタボの原因をつくっている。
そこで、平本さんは「食育は子供が対象と思われがちだが、今こそ大人の食育が重要」と考えた。大手町、丸の内、有楽町の地区だけで23万人の昼間人口がおり、日本の国内総生産(GDP)の約4分の1を稼ぎ出している点に注目する。「バランスのとれた食が働く人を支え、それが企業や経済を元気にする」からだ。
平本さんは丸の内地区などの環境共生を提案するエコッツェリア協会の事務局次長を兼務する。食材の共同調達によって二酸化炭素(CO2)削減につながる環境面の取り組みのほか、丸ビルで「イートアカデミー」と称して、有名シェフの講演や料理講座を開いたり、丸の内マルシェを定期開催し、東京の中心で新鮮な野菜を提供するなどしている。
そうした取り組みが伏線にあって、今回のレストラン誘致へとつながってきた。
丸の内地区では、新丸ビルに黒米を出す蒸し料理の店「ムスムス」などもあり、昼食の選択の幅が広がっている。平本さんは「丸の内から昼食をきっかけに食を変えれば、日本各地の働く人の食への考えが変わるはず」と話している。
■よくかめば満腹中枢を刺激
食物繊維を含む雑穀米や野菜について、タニタ体重科学研究所の池田義雄所長は「カロリーが少なくビタミンやミネラルが豊富」と説明する。
食物繊維はよくかまないと飲み込めないので、「かむ回数が増えることで満腹中枢を刺激し、食事量も減る効果がある。メタボ予防にいい」という。丸の内で開業したタニタ食堂の野菜が大きくカットされているのも、よくかんで満腹中枢を刺激するメカニズムにそったものだ。
また、雑穀米は小腸ではあまり消化されず大腸に運ばれることで、腸内細菌の栄養となり、善玉菌が増え免疫力がアップする作用がある。GI値(グリセミック指数)も白米に比べて低いため、血糖値の上昇が緩やかで「軽い糖尿病や糖尿病予備軍の人たちに勧められる」という。
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