東日本大震災の被災地で公務による死亡と認定された地方公務員のうち、遺族補償金の支給が決まったのは5割にとどまっていることが分かった。申請が例年に比べ大幅に増えたうえ、宮城県内の一般職員の遺族の多くが、警察官や消防職員の殉職と同じ「特殊公務災害」での補償を求めたため、手続きや審査に時間がかかっているという。生活再建を阻む要因になっており、自治体の担当者からは迅速な支給を求める声が上がっている。
地方自治体などの負担金で運営される「地方公務員災害補償基金」が審査を担当する。同基金によると、全国で公務災害死と認定された地方公務員は09年度38人、10年度32人だった。だが、被災3県での認定は5月末までに宮城県内136人、岩手県内124人、福島県内9人の計269人に上った。
通常は遺族補償金の支給手続きは4カ月程度で終わる。3県の遺族の大半は昨年中に手続きを始めているが、支給が決まったのは133件(49%)に過ぎないという。
宮城県内の遺族の大半は、津波で命の危険を感じながら避難誘導や情報収集にあたったとして、特殊公務災害による補償を申請。警察官や消防職員を含めても申請は年数件程度だが、実際の手続きを進める自治体が、相互に情報交換するうちに動きが広がった。
宮城県石巻市の39人の遺族は、昨年11月から順次、特殊公務災害による補償を申請した。特殊公務災害かどうかにかかわらず受け取れる「特別支給金」や「特別援護金」が支給されたケースはあるが、遺族補償金の支給開始は一件もない。市の担当者は「残された家族のためにも早く支給してほしい」と話す。
地方公務員災害補償基金によると、特殊公務災害の場合は通常より詳しい被災状況の証明が必要。基金企画課は「早く支給できるよう努力しているが、人手不足もあり審査に時間がかかっている」と説明している。【竹内良和、福島祥】
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