レストランでの食事中、互いに注意を払い合うことを強いるため、ダン・ロールマンさん(39)と6人の友人はこの春、テーブルの中央に各自のスマートフォン(高機能携帯電話、スマホ)を積み上げた。全員が合意したルールはこれだ。最初にスマホを手にした人が全員の勘定を支払う――。
最大の危機は1980年代に上映された女優ゴールディ・ホーン氏の映画について話が及んだときに訪れた。共演した男優を誰も思い出せなかったときだ。「全員が反射的に」携帯に手を伸ばしたと、ロールマンさんは振り返る。ニューヨーク州ブルックリン在住のロールマンさんは各種世界記録の情報を掲載するサイト、リコードセッター・ドット・コム(RecordSetter.com)の代表で、毎年3月の「ナショナルデー・オブ・アンプラギング(ネット接続を遮断する国民の日)」を最初に呼びかけた1人だ。
食事中に携帯電話でメールのやり取りを行うことは常に不謹慎であったし、今も、これからもそうであろう。しかし、日常生活のあらゆる側面にテクノロジーが浸透するのに伴い、パーティーの主催者や参加者にとって、携帯を触ることは少しもマナー違反ではなくなった。食事中はずっと携帯がテーブルの上にあり、会話を盛り上げるためモバイル百科事典として使われる。リビングルームはiPhone(アイフォーン)の充電ステーションと化している。ただ招待されなかった人がフェイスブックやツイッター、インスタグラム、フォースクエアなどを通じて、仲間外れにされたと知ることもあり、プライベートパーティが今まで通りであるように願う人にとって新しい社交上の不安が生まれることになる。問題はテクノロジー派と非テクノロジー派の両方のコミュニティーで生じるが、これら2派が融合した場合に最大となる。
アーカンソー州ベントンビル在住で、ソーシャルメディア・マーケティング・コンサルタントのレラ・ダビッドソンさん(42)は最近、自宅の位置がピンポイントで表示された地図と実名が公に掲載されたサイトを偶然見つけたため、ウェブを片端から調べ回った。そして原因を見つけた。位置情報を利用したソーシャルネットワークとゲームが融合したフォースクエアにリンクしていたのだ。
ダビッドソンさんの趣味を通じた友人らがダビッドソンさんの住所でチェックインリストを作成し、「レラのドライブウエイ」と名付け、その場所の「メイヤー(市長)」になるために競争していたのだ。ダビッドソンさんは「もう何も個人情報は守れないようになったと思った」と話す。ダビッドソンさんは友人らには忠告せず、つきあいを続けているという。
ニュージャージー州グレンロック在住のサンドラ・ヨルゲンセンさんは先月、40人ほどの招待客の一部が夕食中に子どもたちの様子をチェックするため、携帯メールのやり取りをするのを気にしなかった。しかしヨルゲンセンさんを最も煩わせたのは携帯そのものだった。料理皿の配置計画を邪魔したからだ。あらゆるサイドテーブルやカウンタートップに誰かの携帯が乗せられており、準備した料理の皿を置くためにいちいち携帯をどかすよう言わなければならなかったからだ。「大混乱だった」とヨルゲンセンさんは話す。
コンシューマーブランドやセレブたちのために、夕食を供する仕事をしているベビー・スミスさんは厳しい携帯持ち込み禁止ルールを持っている。ただ、招待状にスマホの使用は禁止だと書くのではなく、手渡しの招待状やカリグラフィー(修飾文字)で書かれた座席カードなどで「非言語シグナル」を送るのだという。誰かが携帯に手を伸ばせば、「その人のところに行って、“ベビーの食卓ではそれは許されていません”と言う」とスミスさんは話す。
スマホは社会的なエスコート役になった、とスミスさんは指摘する。「部屋に入ると知らない人ばかりだったり、不安を覚えたりした時に、人はバッグに手を伸ばして画面を凝視し始める」と言う。スミスさん自身は、活発な“アフター・ザ・パーティ”のツイッターだ。
ヒューストン在住の社交界の名士、ベッカ・ケイソン・スラッシュさんはこの春、俳優ジョージ・クルーニー氏のために夕食会を主催した。スラッシュさんの友人の多くは俳優と一緒に写真を撮影した。スラッシュさんは後で知ったのだが、まだパーティーが続いていた午後10時には、友人の多くがこれらの写真をフェイスブックに掲載していた。「初めは驚いたが、すぐに、私たちが暮らしている時代はこうなんだと気づいた」とスラッシュさんは語る。
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