◇LED照明、扇風機、窓全開…
東京電力福島第1原発事故から2度目の夏を迎え、東京都が家庭や事業者に「賢い節電」を呼び掛けている。照明が極端に減り、エスカレーターが軒並み止まった昨夏のような対策を続けるのは無理がある。快適性を損なわず、息の長い取り組みに変えていこうとの発想だ。都が昨夏から独自認定している「家庭の節電アドバイザー」の無料診断サービスを利用し、記者が「賢い節電」のコツを教わった。【佐々木洋、清水健二】
診断は、事前に家で使っている家電の型式や使用時間など約30項目の質問に答え、それを基にアドバイザーに自宅を見てもらう。
4人で住む調布市内の3LDKのマンションを訪れたのは、生活協同組合「パルシステム東京」職員の大塚晴子さんと組合員の中溝葉子さん。最初に指摘されたのは、風呂場や廊下の照明だ。「白熱球やレフランプを効率のいい電球型蛍光ランプに換えるだけで、消費電力を約5分の1に抑えられます」。計11カ所を交換すると、電気代が年間4815円節約できるそうだ。
エアコンや冷蔵庫は買ってまだ6年ほどだが、家電製品の省エネ性能は近年大幅に向上したという。エアコンを買い替えれば最大で年8000円以上節約できるが、購入費の元を取るには12年以上かかり、すぐには決められない。「今のままでも、エアコンをつける前、窓を開けて5分ほど風を通すと効率がよくなります」
冷蔵庫は買った物のメモをドアに貼っておき、何を出すか決めてから開ける習慣をつけるといいという。これならすぐ実践できる。
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新宿区の共働き夫婦2人暮らしの記者宅には、大塚さんと組合員の渡辺美砂さんに来てもらった。築半世紀近い木造一軒家。夏は暑く冬は寒い。梅雨時はエアコンを除湿モードで使うことが多いが、意外にも「冷房より除湿の方が電気代が高くつくケースがあります」。空気をきちんと冷やし、扇風機を下向きに回して冷気を循環させると効率的という。
古民家らしさを残そうと、照明は白熱電球を主に使っていたが、試しに換えてもらった蛍光ランプも柔らかな色合いだ。白熱灯より熱を出さず、冷房効率も上がるという。
ほのかな明かりを楽しむなら日中に蓄電し、夜間は間接照明として使える「ソーラーキャンドル」というエコ商品があることも教わった。
ふすまや障子は猫が破いてしまうので、廊下の間仕切りはすだれにしてある。「窓を全開して風通しを良くすれば、冷房に頼らずに済むかもしれません」と渡辺さん。家それぞれの工夫の仕方があるようだ。
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7月2日に沖縄と北海道を除く全国で「節電期間」が始まります。北海道も同23日開始です。福島原発事故から2年目の夏、人々の意識や社会の変化を随時、伝えてゆきます。
◇昨年度5700人登録
都の「節電アドバイザー」は昨年6月に制度化された。省エネのノウハウがあると認定された生協や電気、ガス事業者のスタッフが研修を受けると登録証が交付され、依頼に応じた戸別訪問や出前講座ができる。昨年度は5700人が登録し、約52万件の無料診断を実施した。詳しくは都庁内のクール・ネット東京(03・5388・3421)。
環境省も昨年度から都道府県などと連携し、省エネや温暖化防止対策を指南する「うちエコ診断員」の家庭派遣を始めた。
問い合わせは地球温暖化防止全国ネット(03・6273・7785)。
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■この夏の家庭向け「賢い節電」7カ条
(1)冷蔵庫の庫内温度は「中」に設定
(2)テレビは省エネモードに
(3)白熱電球はLEDや電球型蛍光灯に
(4)室温28度を目安にエアコンや扇風機を上手に使う
(5)猛暑日はエアコン使用を過度に自粛しない
(6)家電製品などはこまめに省エネ
(7)消費電力の大きい家電(IHクッキングヒーター、アイロン、ドライヤーなど)は平日午後2時前後の使用を控える
※都省エネ・エネルギーマネジメント推進方針を基に作成
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/education/20120629dde041040044000c.html