麻薬に似た脱法ハーブが、若者らに蔓延まんえんしている。早急な規制強化が必要である。
危険なハーブは「脱法ドラッグ」「合法ハーブ」などと称し、歓楽街やインターネットで公然と売られている。
乾燥した植物に、麻薬に近い化学成分を混ぜたものが多い。紙巻きたばこのように火をつけて吸うと、幻覚を見るなど麻薬を吸った時と同様の状態になる。
東京都内では、1~5月だけで100人近くが救急車で病院に運ばれた。横浜市などでは死亡した人もいる。吸引後に自動車を運転し、他人を巻き込む人身事故を起こすケースも相次いでいる。
対策として、まず必要なのは脱法ハーブを明確に「違法」とし、販売に歯止めをかけることだ。
厚生労働省は7月から、新たに9物質を規制対象に加える。
薬事法は、販売すれば罰則が科される薬物について、化学的な構造を厳密に指定している。
しかし、厚労省の対応は後手に回っている。同じ症状を引き起こす物質でも、わずかに構造が違えば規制の対象外となってしまうからだ。これまでも、規制を受けない類似物質がすぐに登場し、いたちごっこが続いてきた。
こうした状況を打開するため、厚労省は、構造の主要部分が一致する物質を一括して禁止する「包括指定」の導入を検討している。英国では、すでにこの方式が実施されているという。
刑罰を科す要件が曖昧になるとの慎重論も根強いが、薬物を野放しにすることで社会がさらされる危険を考慮すれば、日本も包括指定に踏み出すべきだ。
内閣府の消費者委員会も、消費者の安全にかかわる、と現状を問題視し、包括指定方式の採用を厚労省に提言している。
海外で売られている脱法ハーブの情報を集めて成分を分析し、国内に持ち込まれる前に禁止薬物に指定してしまう“水際対策”も必要だろう。
脱法ハーブは、麻薬よりずっと安い値段で手に入るため、若者が興味本位で吸引する場合が多く、ゲートウエー・ドラッグ(入門薬物)とも呼ばれる。気軽に購入した人が、いずれ麻薬や覚醒剤に手を染めることが多いためだ。
脱法ハーブは極めて危険だと周知し、薬物依存につながる芽をつみ取ることが重要である。
厚労省や警察、自治体だけでなく、学校や地域などが協力して、販売業者の監視や、若者への啓発に取り組まねばならない。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/medical/20120628-567-OYT1T01583.html