[ カテゴリー:食の安全 ]

<食品表示の裏側>一元化問題を考える/上 添加物と使用目的、併記を

◇pH調整剤入りでも「保存料不使用」 欧米では用途名必須

三つの法律で決められている食品表示のルールを一元化しようという議論を、消費者庁が進めている。おかしな表示をいくつか取り上げ、どんな表示が望ましいか、どう改善すればいいかを考える。

コンビニエンスストアでおかず入り弁当を買うと、容器に「保存料・合成着色料・甘味料不使用」と書いてある。保存料が使われていないので「早めに食べないと腐ってしまう」と思う消費者も多いだろう。だが実は、保存目的の添加物は使われている。

表示欄の原材料名を見ると「pH調整剤」「グリシン」とある。日本食品添加物協会によると、pH調整剤は食品を弱酸性に保ち、腐敗を抑える目的で使われる添加物だ。クエン酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなど、約30種類が食品衛生法で使用を認められている。アミノ酸の一種のグリシンも日持ちをよくする効果がある。

弁当を製造・販売する大手コンビニチェーンは、pH調整剤などを使う理由を「食品の変質を防ぐため」と説明する。つまり、pH調整剤、グリシンとも食品の腐敗を防ぐ保存料のような働きをするわけだ。

ところが、食品衛生法ではクエン酸ナトリウムなどを「pH調整剤」、グリシンなどを「アミノ酸等」と表示していいことになっている。保存目的で使っているのに「保存料不使用」と表示しても違反ではないのだ。

食品添加物や遺伝子組み換え作物の問題を科学的に発信するNPO法人「くらしとバイオプラザ21」の佐々義子常務理事は「保存料不使用と表示しつつ、同じ目的で別の添加物を使っていいなら、消費者に誤解を与えるだけだ」と話す。

腐敗防止の効果は、保存料として知られるソルビン酸や安息香酸の方が高い。「pH調整剤やグリシンは一般的に保存料の10倍前後も多く使われる」(日本食品添加物協会)というから、消費者にとっては「保存料不使用」表示はますます理解しづらくなる。

食品分野の技術士で、表示や品質管理に詳しい藤田哲さんは「添加物名の前に、使う目的や用途を表示していないことが消費者の誤解を誘っている。用途表示を義務づけるよう、法律改正が必要だ」と指摘する。

仮に表示欄に「pH調整剤(酢酸ナトリウム、保存目的)」とか「保存料(グリシン、酢酸ナトリウム)」などと使用目的を表示することを義務づければ、保存料不使用表示は成り立たなくなる。藤田さんは「米国やEU(欧州連合)では添加物と用途名の併記が義務づけられている」と話し、日本もならうべきだと主張している。

ただ、用途名表示について日本食品添加物協会は「コンビニ弁当のような誤解を招く表示は問題だ」としながらも、「用途名を併記すると文字数が増えて読みにくくなる。企業などのホームページで公開する方法もある」と話す。

◇「無添加」ルールなし 「消費者受け」狙い、もはや不要

一方、「無添加」表示もまぎらわしい。

たとえば、最近売れ行きが好調なノンアルコールビール。キリンビールの「キリンフリー」の缶容器には「無添加」表示がある。無添加の中身について同社は「人工甘味料、合成香料、酸化防止剤の三つが添加されていないという意味」と説明する。ただ酸味料や調味料は使っている。

他社のノンアルコールビールに「無添加」の表示はない。どこが違うのか。サッポロビールは「人工甘味料も合成香料も使っていないが、酸化防止剤としてビタミンCを添加している」、アサヒビールは「人工甘味料は使っていないがビタミンCと香料は使っている」という。

原材料に大差はないのに表示は違う。業界内にも「消費者受けを狙った表示は誤解を与えやすい」という冷ややかな声がある。

野菜・果汁ジュースでも「無添加野菜」などと表示されるケースがある。こちらの無添加は香料、砂糖、食塩の三つを使っていないという意味だという。

同じ飲料なのに、無添加の内容は商品ごとに違う。「無添加」表示を規定するルールがないためだ。

阿南久・全国消費者団体連絡会事務局長は「消費者が知りたいのはどんな原材料がどう使われているかだ。無添加表示を企業が勝手に使っている。もはや不要ではないか」と話し、消費者庁にルール作りを検討するよう求めている。【小島正美】

◇三つの法律に「表示」が分散、検討会で新たな法案づくり--消費者庁

消費者庁は昨年9月から、消費者団体代表など有識者による「食品表示一元化検討会」(座長、池戸重信・宮城大特任教授)を作って表示の一元化を検討している。

食品表示のルールを定める法律は三つある。まず「食品衛生法」は添加物やアレルギー物質などを表示させ、衛生上の危害発生を防ぐ目的がある。「日本農林規格」、いわゆるJAS法は原材料や賞味期限など品質に関する適正な表示を定めている。また「健康増進法」は、栄養成分の表示ルールを定める。今回、表示にかかわる部分を一元化して別の法律にし、分かりやすくすることを目指す。

これまでに検討会を8回開き、主な論点を五つに分けた。加工食品に原料原産地表示を義務づけるべきかどうか▽インストアの弁当や外食、ネット販売でも表示を義務化すべきか▽過剰摂取で心疾患のリスクを高めるとされる、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸などの栄養表示をどこまで義務づけるか――などを議論している。

6月をメドに最終的な報告書をまとめ、食品表示に関する一元化法案を作って、今年度中の提出をめざす。

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/medical/20120514ddm013100052000c.html

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