高齢者に多いとされる入浴中の死亡事故について、厚生労働省は初の全国的な実態調査を実施することを決めた。厚労省がん対策・健康増進課は「関係学会の要望などを踏まえ、年度内にも着手したい」としている。入浴中に死亡する人は、東京都など一部地域の調査や死亡統計からの推計で年間約1万4000人と、交通事故の死者数(昨年4612人)を大幅に上回ると見られるが、実態は分かっていない。
東京都監察医務院などによる都内の調査や救急搬送患者の調査など、範囲を限定した研究はあるが、全国の事故を網羅した調査はなかった。入浴は日本特有の習慣のため、世界的なデータもない。
入浴時の事故で多いのは、浴槽内で溺れるほか不整脈や心筋梗塞(こうそく)、くも膜下出血などを発症するケース。救急搬送される人の大半は高齢者で冬場に増加。脱衣所から寒い浴室に移動した際、急激な温度変化で心臓に負担がかかる「サーマル・ショック」が原因と考えられるケースが多いという。
浴室内の温度管理や風呂のつかり方、水分補給などである程度は予防できるが、正確な実態と死因が不明なままでは科学的なアドバイスや対策作りが難しい。日本温泉気候物理医学会と日本救急医学会、日本法医学会は27日、小宮山洋子厚労相に死者数の把握や死因を解明する調査の確実な実施と、予防のための研究支援を求めた。小宮山厚労相は「しっかり取り組みたい」と答えた。
入浴時の事故に詳しい猪熊茂子・日本温泉気候物理医学会理事長は「効果的な防止策には全国レベルの調査が欠かせない。高齢者の安全な入浴法を確立し、啓発するためにも実態調査は重要だ」と話す。
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