働き女子のみなさん、こんにちは。マーケティングライターの牛窪恵です。今日から「エコと得する情報」をお届けしていきます。第1回のテーマは「エコ農園」です。
2011年3月の東日本大震災から、1年超。震災後、食の安全・安心志向の高まりから「自分でエコな野菜を育ててみたくなった」と話す女性も多いようです。
一方で、働く女性はなにかと忙しい。タキイ種苗(京都府京都市)の「野菜と家庭菜園に関する調査(11年)」でも、現在「家庭菜園」をしていない理由に、「時間的な余裕がない」をあげた人が34.7%でトップ。2位は「場所が確保できない」でした。
ところが最近、十分な時間と場所がなくても始められる「エコ農園」が、好奇心旺盛な20~30代女性に注目を集めています。いったい、どんなものなのでしょうか。
「大学時代の女友達が、ネット農園始めたんです。ライブカメラで見せてもらったら、私もやってみたくなっちゃって」
と話すのは、都内のIT系企業に勤めるA子さん(20代)。
毎日就業時間の9割は、オフィスでパソコンに向かう。たまには豊かな自然にふれたい、自分の手で野菜を育ててみたいと思っていたとき、友達にネット農園の存在を教えられた。
「ネット農園(菜園)」とは、小規模なレンタル農園とインターネット上のバーチャル機能を融合させたサービス。A子さんの友達が利用するのは、NECビッグローブ(東京都品川区)が10年にスタートさせた「BIGLOBEファーム」だ。
友達は数カ月前、BIGLOBEファームが展開する埼玉県久喜市のレンタルファームを2区画(15平米)借りたという。社内に「やってみたい」と手をあげた同僚が2人いて、3人でレンタル代金(2区画・月額5480円/初期費別)を折半。水やりや草むしりは、管理人が週3回程度通ってくれるため、週末しか農園に行けなくても問題ない、とのこと。月1~2回、グループ3人が交替で久喜まで通っているそうだ。
A子さんが一番驚いたのは、友達がネット上でライブカメラ越しに自分の菜園の様子をチェックしたり、専用のSNS(「農園コミュニティ」)を通じて、管理人にトマトの育て方を質問していること。
「ネットと農園って、対極にあるイメージだったけど、実は違った。相談できる相手がいると安心だし、毎日ライブカメラで様子を見られたら、自分の野菜に愛着も生まれますよね。これなら私もできそう」
一方、「最近、母親がネット菜園で野菜づくりにハマってるんです。しょっちゅうケータイで自慢するんですよ」
と笑うのは、静岡のアパレル企業に勤める、B子さん(30代)だ。
B子さんの彼女の母親が利用しているのは、NTT西日本アセット・プランニング(大阪市)が事業展開する「レンタルECO菜園」。実家に近い京都九条にレンタル菜園を借り、無農薬でタマネギや小松菜を育てている。
収穫した野菜を送ってくれるのはうれしいが、顔を合わせるたびに二つ折りのケータイをパカッと開き、栽培途中の画像やウェブカメラでの動画を披露するという。24時間、ネットを通じてケータイでも育成状況がチェックできるため、母親にとっては格好の「ご自慢ツール」なのだ。
「でも、育つ途中の小松菜を何度も(画像で)見せられてると、収穫して送ってもらったとき、“あぁ、あの小松菜か”って感動する。悔しいかな、私も作ってみたくなっちゃいました」
レンタル菜園が注目され始めたのは、07年。同年、小田急電鉄(東京都渋谷区)が小田急線「成城学園前」(世田谷区)の駅前に、会員制のレンタル菜園「アグリス成城」を開業した直後からだ。
6平米の菜園が、300区画。私も以前取材したが、駅前という絶好の立地から、通勤や買い物のついでに立ち寄りやすいのがメリットだ。一方で、1区画の賃料は年間15万円弱と決して安くはない。シャワーやラウンジを備えたクラブハウスがあるなど、菜園に長く滞在したい主婦層にとっては魅力的だが、忙しいOLにはちょっと敷居が高い印象も受けた。
ところがその後、よりカジュアルで20~30代の働く女性にも利用しやすいエコ菜園が、次々登場するようになった。
たとえば09年、東京・表参道の商業ビル屋上にオープンした「表参道彩園」。農業活性化に取り組む農業ベンチャー、銀座農園(東京都中央区)が、表参道周辺の企業に勤めるOL層を意識して始めた、レンタル菜園だ。ほとんど告知していなかったにもかかわらず、会員募集時は口コミだけで2倍を超える倍率に達した、とのこと。いまも女性を中心に、根強い人気を誇る。
10年には、あのレジャー施設のなかにも、エコでカジュアルなレンタル菜園が登場した。
2010年、トヨタグループが運営する商業施設「トレッサ横浜」(横浜市)の南棟2階にオープンしたレンタル菜園が、「トレッ菜園」だ。
運営するのは、先の銀座農園。1区画の利用料が廉価(月額3150円)なのは、約1平米のコンテナで作物や花を栽培するカジュアルさゆえだ。トレッサ内には花や種苗を扱う店もあり、買った種や苗をすぐ植えられる。
横浜市内に住む派遣社員のC子さん(20代)は、休日によくトレッサを訪れる。菜園を借りるかどうか、まだ迷っている段階だが、「育てるとしたら何にしよう」と野菜の種を眺めるようになってから、スーパーでもよく野菜を買うようになった。なるべくゴミにしないよう、エコにも心がけている。
「これまで野菜って高いなと思ってたけど、小さな種からずっと育てる手間ひまを考えたら安いもの。いまは買った野菜も無駄にしないよう、大根の葉っぱまでお味噌汁に入れて使ってます」
先のB子さんは、母親が利用するネット菜園の影響を受け、最近、キッチンでバジルを育て始めた。プランターを置くスペースがなかったため、使い終わった牛乳パックに鉢底ネットを敷き、バジルの種を蒔いてみた。なんとかしてバジルを栽培できないかと、ネットで調べて分かった方法だという。
「場所や時間がなくても、エコな野菜は育てられる。要は、自分も育ててみたいっていう思いを、小さな行動に移すことじゃないかな」
オフィス街や人気のレジャー施設にも次々とオープンするレンタル菜園。また、たまにしか農園に行けなくても、発育状況を日々ネットで確認できるネット農園。これらは、利用者はもちろん、まだサービスを利用していない20~30代女性にも、エコな野菜やライフスタイルを身近に感じさせる効果があるようだ。
牛窪 恵
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120405-00000001-woman-ent