がん検診と喫煙者数の大幅減少のおかげで、米国内のがん発症率は低下している。だが、肥満や座っていることの多い生活スタイルに関連したいくつかのがんの発症率は1999年から2008年の間に毎年上昇している。28日に公表されたリポートで明らかになった。
がんの現状に関する米国民への年次報告によると、腎臓とすい臓、下部食道、子宮のがん発症率は最新データが手に入る08年まで、毎年上昇した。また、50歳以上の女性の乳がん発症率は1999年から2005年の間に毎年1.3%低下し、その後05年から08年の間には若干上昇した。
これ以外にも、いくつかのがんのリスクが肥満によって高まることを示す証拠が次々と発表されている。国際がん研究機関(IARC)によると、先進国で多くみられるがんのうち最大3分の1は過剰な体重や運動不足に関連していることが明らかになっている。肥満の割合は米国では10年前から横ばいだが、米疾病対策予防センター(CDC)によると、成人の約68.8%は太り過ぎもしくは肥満とされている。
肥満に関連するがんには、乳がんや直腸がんといったよくみられるタイプのがんも、すい臓がんなどの比較的珍しいがんも含まれる。さらに、いったんがんと診断されたあとの生存率も体重が重い場合、低下するようだ。CDCのがん管理予防部門のディレクターで同研究報告の執筆者の1人、マーカス・プレシア氏は、肥満の影響は「極めて大きい」と話す。
米医学誌「Cancer」(電子版)で28日に公表された同リポートは、CDCと北米がん中央登録所協会(NAACCR)、国立がん研究所(NCI)、米国がん協会(ACS)の研究者らがまとめた。
決定的ではないが、特定の食べ物や栄養素とがんの因果関係よりも過剰な体重や運動不足とがんの関係の方がはるかに明白だ。
ノースカロライナ大学ギリングズ・スクール・オブ・グローバル・パブリック・ヘルスの栄養学部門の責任者、ジュン・スティーブンス氏は、「ビタミンやミネラルのサプリを飲むことで自分の体に非常によいことをしていると考えるる人が多いが、健康のためにやるべきことは、よく運動して体重管理をすることだ」と述べた。
こうしたがんの発症率の上昇は、かつて多かった肺がんなどに対する最近の対策の進展と好対照だと科学者たちは指摘する。1960年代以来、喫煙率は大幅低下している一方で、肥満率は大幅に上昇した。
イエール大学公衆衛生学部で疫学を専門とするスーザン・メイン教授は「ここ数十年間、喫煙の減少によってみられた前進の少なくとも一部は現在、肥満によって相殺されている」と語った。
全般的には、がんの診断率は1990年代半ば以来、若干低下している。男性の間では1998年から2008年の間に年0.6%ずつ低下した。しかし、低下は一様ではなかった。一方、女性の場合は1998年から2006年の間のがん発症率は年間0.5%低下し、06~08年は横ばいだった。
さらに、7000以上の研究を調査した結果、過剰な体重といくつかのがんの間の関連性を示す証拠が明らかになった。正確な因果関係は分からないが、脂肪細胞が体にインスリンやホルモンといった腫瘍の拡大を促す物質を作るよう促している可能性がある、と科学者らは指摘している。
閉経後でしかも太り過ぎの女性は乳がんや卵巣がん、子宮がんのリスク要因である遊離したエストロゲンやアンドロゲンの水準が高い可能性がある。
下部食道の腺がんは、胃酸の慢性的逆流に苦しむ人々がかかる場合が多いが、過剰な体重が引き金となることがしばしばある。
肥満に関連したがんの全てが増加しているわけではない。プレシア氏によると、検査が広く行きわたったことが一因で、結腸直腸がんの発症率は1999年から2008年間に年2.6%ずつ低下した。肥満に関連したがんの増加が今後も続くかどうかについて、同氏は、「悪化すのではないかという気はするが、明らかではない」と語った。
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