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「もたもた」「グズグズ」脳は訓練で変えられるか

 ネットの文明が成熟する中、次第に明らかになってきていることがある。それは、人々の「可処分時間」がますます貴重なものになってきているということ。
 テレビやゲーム、そして携帯やインターネット。さまざまなモノやサービスが、人々の限られた一日をめぐって、「覇権争い」をしている。そんな中で、優勝劣敗が決まっていく。経済構造が変わる。
 消費する側だけではない。生み出す側、働くサイドも同じこと。時間をうまく使いこなすことは、ビジネスや人生がうまくいくうえで一番大切なポイントの一つ。時間は、現代においてもっとも希少な資源となっているのである。

 ところが、時間活用がなかなかうまくいかない。時間はすべての人に平等に与えられているはず。しかし、それを使いこなす能力や技術は平等ではない。誰にでも時間術の達人になる資質はあるのに、その可能性に気付いていないことも多いのだ。
 一番大切なのは、「生きた時間」の使い方をすること。ただ単に、忙しがっていたりとか、効率を上げたりすればいいわけではない。人間だって生きものなのだから、時間を使うにも、メリハリのようなものがあるのだ。
 オンとオフを切り替える脳の領域は、前頭葉にある。自分の置かれた文脈を察知し、脳の活動を調整する「眼窩前頭皮質」。そして、目前の課題をこなすために脳のさまざまな回路に指令を出す「背外側前頭前皮質」。これらの領域をうまく使いこなすことで、時間術の達人になることができるのである。

 商品やサービスを消費する側としても、つくって送り出す側としても、大切なのは切り替えの素早さとその後の集中。ぱっと切り替えて、新しい課題に取り組む。その素早さこそが、時代に求められているのである。
 そんなに急に切り替えるのは無理だ、という人もいるかもしれない。しかし、切り替えることができるかどうか、集中できるかどうかは、「生まれつきの性格」などでは断じてない。実際に切り替え、集中することを繰り返すことで、次第に眼窩前頭皮質や背外側前頭前皮質の回路を鍛えることができるのだ。
 いわば、筋トレと同じこと。使っていない回路は次第に衰える。使えば使うほど強くなる。最初はもたもたしていても、ぱっと切り替えて集中することを繰り返していれば、次第にそんな脳になってくる。

 もともと、瞬時に切り替えてトップスピードに持っていくことは、日本の武術の基本的な考え方だった。どんなにリラックスしていても、敵が襲ってきたら瞬時に最高のパフォーマンスをしなければ、命が危ない。
 坂本龍馬が宿屋でおりょうとくつろいでいるときに新撰組が襲撃してきたら、とっさに対応しなければならない。「準備をするから、3分間部屋の外で待ってくれ」などと言っても通じない。

 現代のビジネスの現場では、命をとられるわけではないけれども、とっさに切り替えてトップスピードに入る必要があることに変わりはない。そのためにも、前頭葉の関連する回路を鍛えたい。
 脳を鍛えるのは、現場における実践あるのみ。まずは生まれつきの性格などという思い込みから解放されて、今日この瞬間を全力で生きることから始めたらどうか。
 脳の中を見ることはできないけれども、やればやるだけ、確実に回路は強くなっていく。それこそが、時間を使いこなす現代の「アスリート」への道である。

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脳科学者
茂木健一郎
もぎ・けんいちろう●1962年、東京都生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)ほか、著書多数。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120225-00000002-president-bus_all

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