◇県内出身者ら製作
長岡市などを舞台にしたサスペンスホラー映画「チェイン」が先月下旬から今月上旬に撮影された。米・ハリウッドなど海外で活動する県内出身のプロデューサーや監督が製作し、新潟から世界に向けて発信する試みの映画だ。低予算の映画ながら、撮影現場は若いスタッフや俳優らの熱気であふれていた。
映画は、インターネットを利用した猟奇的な連続殺人を巡り、不可解な連鎖(チェイン)が起きていくというストーリー。監督は新潟市出身で、マレーシアなどで活動する細井尊人(たかと)さん(33)。プロデューサーは、ハリウッドを拠点にする市川誠さん(35)と、長岡市出身でハリウッドで活動する渡部翔子さん(28)。撮影は新潟市の「中央映画社」も参画している。
撮影は、同市内の事業所跡で、クライマックスの格闘場面から開始。主演女優は菅井玲さん(29)。現場では、出番に備え、隅に座り込んで気持ちを集中させていた。撮影の印象を「妥協せずにじっくりとやっている感じ」と話す。周囲の人が死んでいくという役柄で、「気持ちを役に持っていくのが苦しい。過去の気持ちをかき集めて膨らませている。必死です」と語った。
刑事役で出演するベテラン俳優、渡辺裕之さん(56)は、他の俳優に細かい動きなどをアドバイス。現場を熟知しているムードメーカーだ。新潟県出身の監督とプロデューサーが映画製作に携わることについて、「新潟の人をつなげたり、経済に元気を与えたりするのは、同じ空間を共有するのが早い。映画づくりは適している」と評価。短期間でつくる低予算映画でも、「熱い思いでつくられる映画は何かしら魅力がある。現場で意見を出し合っていい作品ができる」と話し、「観客が『パート2があるよな』と思えるような映画にしたい」と笑顔を見せた。
格闘場面の撮影は進み、殺人鬼が被害者の喉をナイフで切る場面に。俳優の喉の周りに特殊メークを施す。血のりが激しく噴き出し衣装にも付着するため、撮り直しがきかない。「一発撮り」と現場に掛け声がかかる。緊張感が張り詰める中、いざ本番。全員が息をのんで見守る中、見事成功。ほっと安堵(あんど)感が漂った。
今冬は記録的な大雪に見舞われているが、撮影には好条件だった。長岡市内で陰惨な殺害現場を設定した撮影では、背景に広がる雪景色の美しさとの対比で、映像に奥深さが表現された。
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現場で特徴的なのが、米国方式の撮影監督制を採用していることだ。撮影と照明を統括する立場で、監督と意思疎通を図りながら撮影を進めていく重要な役割だ。
撮影監督を務めたのは、米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞を受賞した米国版仮面ライダーのアクションで、撮影を担当した谷基彦さん(44)。大阪市出身で、ハリウッドを拠点に活動している。今回の格闘場面の撮影では、車のハンドルのような機材に取り付けたハイビジョンのデジタルカメラを両手で持ち、俳優の素早い動きに対応した。長岡大学(長岡市)などのロケでも、小型のクレーンを操作し、細井監督とどんなカットで撮るか、アイデアを出し合っていた。
細井監督と谷さんは初顔合わせだったが、2人とも普段から撮影監督制で仕事をしており、細井監督は「スタッフとの話し合いの窓口が一つで済む」、谷さんも「機能したと思う」と語るように、現場の雰囲気は良く、撮影はとてもスムーズだった。
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既に次回作も新潟で撮る構想がある。プロデューサーの渡部さんは「新潟はコメ、酒だけではなく映画も素晴らしいとアピールしたい。新潟での撮影が、世界に発信できるモデルケースになればと思う」と自信を見せる。市川さんも「低予算でも世界で戦える映画にしたい」と熱く語る。
撮影を終えた細井監督は「映画づくりを通して、若者に、地方でできることはもっと多いんだよとアピールしたい。新潟を盛り上げられたらと思う」と結んだ。映画は今夏以降、日米で公開される予定。
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