近年、大規模な自然災害が相次ぎ、地震などによる土砂崩れや台風、「ゲリラ豪雨」などの大雨で、自動車内に閉じ込められる事故が増えている。こうした状況下では早く車内から逃げ出すことが必要だ。事故への備えや車内からの脱出法についてまとめた。
◆危険ルート避ける
「電子機器が数多く使われている自動車は自然災害に決して強くない。災害が増える中、車内に閉じ込められる事故のリスクは増している」。日本自動車連盟(JAF)の高野敏勝調査研究課長は、こう警鐘を鳴らす。
JAFは平成22年、車の水没や冠水路走行を想定したテストを行った。その結果、水深90センチ(ドアノブの付近)で水圧のためドアが開けられなくなった。女性の場合、水深60センチ程度でも開けるのは難しいという。高野課長は「土砂の場合、さらに開けにくくなるのではないか」と指摘する。
冠水道路の走行テストでは、水深30センチでは低速で走行できたが、60センチではエンジン内部に水が入り、車が動かなくなった。
水がエンジンルームや車内に入ってきた場合、車の電気系統に損傷を与える可能性もある。そのため、大半の車が採用している電動式のパワーウインドーは動かなくなる。
これらの結果を踏まえ、高野課長は「アンダーパス(線路や他の道路をくぐり抜ける掘り下げ式の道路)など、豪雨の際に冠水している箇所は迂回(うかい)してほしい」とアドバイスする。土砂崩れなどが発生しやすいルートも避けるべきだ。
◆冠水路は低速走行
冠水した道路に入ってしまった場合、時速10キロメートル程度の低速で走行し、抜け出す。途中でエンジンが停止した場合は、車から逃げ出すことが必要だ。
脱出時はまず、前部、後部、背部を含め、開けられるドアや窓を探す。開けられる場所がなく「閉じ込められた」場合は窓ガラス(フロントガラス以外)を割って外に出る。先端のとがった「脱出用ハンマー」を使えば、女性の力でも簡単に粉々に割れるという。
ただ、脱出用ハンマーは車に標準装備されているものではないため、「ほとんど普及していない」(業界関係者)のが現実だ。高野課長は「自分は大丈夫とは思わず、脱出用ハンマーとシートベルトを切るカッターは車内に備えておいてほしい」と呼び掛けている。
■女性は軽いものがお勧め
脱出用ハンマーは自動車用品店などで販売しており、価格は1000~3000円程度。
スーパーオートバックス東京ベイ東雲(東京都江東区)では、消火機能やLED(発光ダイオード)ライト付きなど約10種類を取り扱っている。販売担当者は「女性は軽いものがお勧め」と話す。
化学品メーカー、日本カーリット(千代田区)は、発炎筒との一体型製品「スーパーハイフレヤープラス+ピック」(1480円)を主に自動車ディーラー経由で販売。設置場所に困らない便利さが人気で、昨年1年間で約101万本が売れたという。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20120203109.html