1人暮らしの高齢者らの「万が一」の際に備え、持病や血液型など、救急搬送時の治療に必要な情報を記入したカードをペットボトルに入れ、「どの家庭にもあり頑丈」である冷蔵庫に保管しておく「救急カプセル」が大阪で普及している。東日本大震災後に導入する地域が増え、府内では少なくとも27市町で導入されている。大阪市内で初めて導入した鶴見区では、これまでに「救急搬送時に救急カプセルが活用された」事例が約30件あるという。
普及に取り組む大阪市北区社会福祉協議会によると、救急カプセルとは、A4判の「救急情報カード」に名前、親族の緊急連絡先、持病やかかりつけ医などを記入し、500ミリリットルの空きペットボトルに入れたもの。それを冷蔵庫に入れて保管しておくことで、1人暮らしの高齢者らが緊急搬送される際、救急隊員が冷蔵庫を開ければ治療に必要な情報をスムーズに得られる仕組みだ。
保管場所が冷蔵庫なのは「どこの家庭にもあり、見つけやすく、頑丈で地震でも壊れにくい」(同協議会)ことが理由。大阪市内では鶴見区や北区、住吉区などが導入しているほか、堺市でも一部の区が導入。大阪府社会福祉協議会によると、府内ではそれ以外で、少なくとも25市町が導入している。
各地区の社会福祉協議会や消防署、ボランティアらが共同で取り組む例が多いが、自治会などが地域単位で独自に導入している例もあるという。基本的な仕組みはどこも同じだが、「救急カプセル」以外に「救急医療情報キット」などと名前が異なるほか、配布対象者や対象年齢が地域によってばらつきがある。東日本大震災後に、導入する地域が増加し、障害者など高齢者以外からの問い合わせも増えたという。
平成20年に東京都港区が全国で初めて導入し、全国へ広がった。大阪市鶴見区や北区では、専用の用紙と説明書、カプセルが入っていることを示すために冷蔵庫の扉に張るシールをセットで配布している。
21年夏に導入した鶴見区では、これまでに約1万3千セットを配布。22年には同区内で1人暮らしをする80代の男性が救急搬送された際、カプセルによって、男性に心臓病の持病があることが救急隊員に伝わり、命を取り留めるなど、同区ではカプセルが救急搬送時に活用された例が約30件報告されているという。
大阪市鶴見区社会福祉協議会の宇都宮葉子さんは「救急カプセルを活用してもらうことも大事だが、このカプセルを手渡して説明することで、1人暮らしのお年寄りとコミュニケーションを取ることができるのも大きなメリット」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/bizskills/healthcare/snk20111226100.html