多機能携帯電話「スマートフォン」を狙うウイルスが急増している。ウイルス対策ソフト会社トレンドマイクロ(東京都渋谷区)によると、今年に入って十一月末までに延べ九百件以上。同カスペルスキー(千代田区)の調査では、九月だけで八百六十六件が見つかった。スマートフォンの普及とともに増えており、関係者は対策ソフトの導入など警戒を呼びかけている。
スマートフォンは、従来の携帯電話では見ることのできないパソコン向けのサイトを見ることができる半面、パソコンと同様にウイルスに感染する。
トレンドマイクロによると、ウイルスは昨年末段階では五件だったのが、今年夏から増え始めた。十一月末現在で、基本ソフト(OS)「アンドロイド」を狙うウイルスが九百十六件、iPhone(アイフォーン)を狙うのが二件見つかった。
最多の九十六件が見つかった系統のウイルスは、サイトなどに仕込まれた読み取りコード(QRコード)を取り込むと、別のサイトに接続して感染。所有者が気付かぬうちに、特定の電話番号につなぎ、高額のサービス料金を請求する。
壁紙をダウンロードすると感染するタイプは三十五件あった。個人情報であるスマートフォン端末の識別番号を勝手に送信。ウイルスのプログラムを自動更新する機能もある。
ウイルスは、端末にダウンロードして使う正規のアプリケーションソフト(アプリ)に成り済ましている例が多い。ダウンロードした使用者が、気付かないうちに感染する。
同社は、電話会社のセキュリティーサービスや信頼できるアプリの利用、端末のパスワード管理を徹底するなどの対策を取るよう呼び掛けている。
◆周囲の会話筒抜け 通話履歴流出も
ウイルスはどんな悪さをするのか-。トレンドマイクロ社の技術者が再現すると、感染したスマートフォンは、触れてもいないのに他の端末に勝手に電話し、通話だけでなく周囲の会話までもが筒抜けになった。
このウイルスには、通話内容をSDカードに記録し、特定のパソコンに送信する機能まである。「感染した端末を会議室の机に置いておくと、外部からの遠隔操作で、秘密の会話を聞かれてしまう」と技術者。すべて、端末の所有者が知らないうちに行われる。
数は少ないが、衛星利用測位システム(GPS)機能で所有者の位置情報を盗み出したり、端末などに記録された電話帳やメール、通話履歴などの情報を抜き取ったりするウイルスもあった。
ウイルス以外にも、パソコンと同様の犯罪が見つかっている。大手接続業者を装ったメールに書かれたアドレスに接続すると「パスワードの有効期限が近いので再登録を」と要求し、個人情報を打ち込ませる「フィッシング」が出現。また、成人向けサイトに接続させて料金を請求する「ワンクリック詐欺」もある。
スマートフォンは今年、普及が急激に進んだ。マルチメディア関連の市場調査をするMM総研(東京)によると、今年四~九月のスマートフォンの出荷台数は一千万台超。本年度全体の見通しでは二千三百万台を超え、国内の携帯電話総出荷台数の半数を超える勢いだ。
トレンドマイクロ啓発担当の内田大介氏は「スマートフォンは携帯電話ではなく、電話機能が付いた小さなパソコンと考えた方がいい。機能の便利さだけでなく、セキュリティー面にも関心を」と呼びかけている。
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