【ゆく卯くる辰】
酒を飲む機会が増える年末年始。ほどよく飲めば人間関係の「潤滑油」にもなるが、飲み方を誤ると急性アルコール中毒や、場合によっては「死」に至るケースもある。専門家にお酒との上手な付き合い方を聞いた。(竹岡伸晃)
◆自分の体質を知る
口から入ったアルコールは胃で約20%、小腸で約80%がそれぞれ吸収され、血液に入って全身に行き渡る。血液に入ったアルコールが循環して脳に到達して神経細胞に作用し、まひさせた状態が「酔った」状態だ。
アルコールについて詳しい洗足メンタルクリニック(東京都目黒区)の重盛憲司院長は「アルコール度数の高い酒を速いペースで飲むのは危険」と警告する。急速に体に吸収され、心臓や呼吸などをつかさどる脳の中枢にまひが及ぶと、「死に至る可能性がある」という。
では、どのように飲めばいいのか。アルコールに関する啓発活動などを行っているサントリー(大阪市北区)の田中潤ARP室長は「自分にとっての適量を把握したうえで、食事しながら飲むのが基本」と強調する。空腹時に飲むとアルコールが吸収される速度が速いため、酔いやすくなるためだ。
おつまみとしては、肝臓に負担をかける脂っこいものや、血圧を上げる塩分の強いものは避けたい。田中室長は「魚や肉、野菜、穀類、果物などをバランス良く食べるのがお勧め」とアドバイスする。
重盛院長によると、日本人は「アルコールを代謝しにくい体質」を持つ人の割合が高く、約40%はアルコールに弱く、約5%は「全く飲めない」という。
自分がどの体質に当たるのか知るには「パッチテスト」が有効だ。薬局などで購入できるパッチテープ(薬剤の付いていないガーゼ付きばんそうこう)に消毒用アルコールを数滴染みこませ、上腕内側に貼る。7分後にはがし、直後に赤くなれば「飲めない」▽さらにその約10分後に赤くなっていれば「弱い」▽変化がなければ「強い」-という。
◆正しく飲めば
酒席では、酒に弱い人への無理強いは禁物。最近はノンアルコール飲料の種類も充実しており、それらを楽しむのも一つの方法だ。
飲み過ぎて二日酔いになった場合、「午前中はゆっくり休み、午後は水分を補給しながら入浴などで汗を出す」(重盛院長)ことで、体調を整えることができる。
医師や酒類メーカーなどでつくるアルコール健康医学協会では「適正飲酒の10カ条」を提案している。
同協会の古屋賢隆常務理事は「『酒は百薬の長』という言葉もある通り、正しく飲めばコミュニケーションが進み、健康にも良い。『適量を楽しく』を心掛けてほしい」と話している。
■急性アルコール中毒の搬送 昨年12月は都内で599人
東京消防庁のまとめによると、昨年12月に都内で急性アルコール中毒で搬送された人数は599人。20代が234人で最も多く、30代(108人)、40代(81人)と続いた。洗足メンタルクリニックの重盛院長は「酒に酔った人を起こそうと声を掛けたり、体を揺すったりしても全く反応がないときは危ない。喉に物が詰まらないよう横向きに寝かせ、すぐに救急車を呼んでほしい」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/bizskills/healthcare/snk20111208134.html