国民生活センターは1日、スマートフォンの普及の一方で、その特性が周知されず、スマートフォンに関する相談件数が急増しているとして、今後に役立てられるよう相談事例集をとりまとめた。
国民生活センターおよび全国の消費生活センターのデータベースであるPIO-NET(パイオネット、全国消費生活情報ネットワーク・システム)における携帯電話関連の相談件数は、減少傾向にあるものの、スマートフォン関連の相談は増加。2010年度は542件の相談が寄せられたというが、2011年度(10月31日までの登録分)は1789件と3倍以上に増加した。携帯電話関連の相談全体のうち、スマートフォン関連の相談が占める割合は2010年度が約9%、2011年度は約20%となる。
ここで言うスマートフォンとは、ユーザーからの申告、あるいは携帯電話会社の商品案内でスマートフォンとされたものや、汎用のOSを搭載し、アプリを自由にダウンロードできる機種を指す。
スマートフォン関連の相談をするユーザーは、40代までが約75%を占め、20代や30代の割合が従来の携帯電話よりも高い。また男性のほうが女性よりも多い。地域別に見ると関東地方が約半数で、従来の携帯電話と比べ、大都市圏に集中しているという。どちらかと言えば、いわば“新しいもの”に敏感な、一定のITリテラシーを持つと見られる層が少なくないように見えるが、そうしたユーザーでもスマートフォンで多くのトラブルに見舞われている現状が示唆されている。
■ 品質、バッテリー、通信に関する相談
こうした相談の背景には、従来の携帯電話の延長線上で利用され、これまでユーザーが経験で得てきた知識がスマートフォンでは通用しないことがある。そのため、携帯電話会社やメーカーにとって「スマートフォンだから仕方ない」「スマートフォンだから当たり前」ということでも消費者にとっては当たり前ではないことが多い、と国民生活センターは指摘する。パソコンに近いとされつつも、日々の生活に欠かせないアイテムであり、手放したくても期間拘束型契約に伴う解除料がかかることが多い点はパソコンと異なる特性、とされ、パソコンや従来の携帯電話と比べても解約に関する相談は最も多い(35.2%)という。
品質に関する相談もまとめられている。「修理に出しても不具合が続く」として、突然電源が落ちたり、電話ができなかったりするという事例では、修理を依頼し基板交換を行ったものの同じような事象が生じたという。また購入した機器を利用しようとすると電波の状態が悪く、修理を依頼すると代替機では正常に利用できたが、点検が終わった元の機種を利用しようとすると改善されていなかった。別の事例ではパソコンとタブレットでブックマークの同期が突然できなくなり、サポートセンターに相談したところ、OSの不具合と回答され、OS提供事業者の責任範囲とされた。そこでOS提供事業者に問い合わせしようとしたがネット上にしか窓口がなく、1カ月待っても返事がなかった。こうした品質の相談では、これまで相談先がスマートフォンでは分散化したり、ユーザー自身の使い方に起因するのか、機器側の不具合に起因するのか原因の切り分けが困難となっている。
バッテリー関連では、購入したばかりの機種でも翌日の昼ごろにはバッテリー残量がなくなったため、店舗へ交換を申し出たが「スマートフォンはこういうもの」と回答された。一方、パンフレットには待受時間が230時間と記載され、納得できない、という声がある。同様にさほど利用していないのにも関わらず、パケット通信料が上限に達した、という相談、あるいは海外旅行でスマートフォンを持っていき、利用はわずかだったが料金は1万2000円~1万3000円と高額になり、アプリの自動更新など関する説明は事前に受けていなかった、という相談もある。このほか、一定の通信量に達すると、通信速度が制御されるという状況についての相談がある。
国民生活センターでは、「スマートフォンは従来の携帯電話と機能や特徴が大きく異なる」と指摘。不具合発生時には、どういった症状なのか確認すること、むやみやたらにアプリをダウンロードしないこと、海外渡航時には事前に設定方法や課金の仕組みなどを確認することなどを消費者に向けたアドバイスとして示している。消費者の相談に応える機関ということで、消費者側へのメッセージでまとめられている報告だが、キャリアやメーカー、OS提供者にとっても解決すべき課題となっている。