宮城や岩手県など被災地の保健師が、震災後の活動や苦悩を語った映像記録集の製作が進められている。保健師教育に取り組むNPO法人「公衆衛生看護研究所」(東京)が企画した。NPOは「再び大規模災害が起きた時に備えて参考にしてほしい」と話している。【宮崎隆】
◇NPO法人、次への備えに…来年5月ごろ完成予定
保健師は主に自治体職員として病気予防や健康増進を担う。NPO事務局の菊地頌子(うたこ)さん(68)によると、9月上旬から撮影を開始。これまでに宮城県石巻市や岩手県陸前高田市、千葉県旭市などの被災地で計15人ほどの保健師の証言を集めた。
「家族の安否も分からないまま避難所で救護にあたった」「行方不明になっている役場の同僚の家族に会うのがつらい」。行政も壊滅的な被害を受け、保健師たちはカメラの前で時に涙を浮かべて震災直後の苦悩を回想する。
「担当していた地域全体が流されてしまい、住人とのつながりがいっぺんに消えてしまった」「家も職も失ってお酒の量が増えた被災者も多い」。活動の中で浮かんできた問題も率直に語っている。
04年の中越地震で被害を受けた新潟県小千谷市の保健師からも聞き取り、被災者や保健師自身の心のケア、障害者らの見守り活動など復興までの長期的な課題も明確にした。福島県や阪神大震災の被災地でも撮影を続け、来年5月ごろに完成予定だ。
◇新たなコミュニティー作りも仕事の一つ
証言者の一人で石巻市の保健師、阿部清子さん(33)は震災当日から3日間、高台の中学校体育館で救護活動にあたった。1000人を超える避難者の中には、人工透析が必要だったり、体温が低下した状態でかつぎこまれるなど応急処置の必要な人たちが大勢いた。
しかし医師や看護師はいなかったうえ、交通網も遮断されたため救援物資は届かない。限られた消毒液やガーゼで応急処置を施すとともに、かき集めた毛布で患者を温めながら「そばにいるから安心して横になって」と励まし続けた。
震災数カ月後、仮設住宅に住む高齢の女性を訪問したところ、ユニットバスの段差を苦にトイレの回数を減らそうと水分補給を控え、体調を崩していた。
仮設住宅への入居が進むにつれて、被災者の抱える課題を行政の担当部署につなぐことが増えてきたと感じる。阿部さんは「地域にできるだけ足を運び、新たなコミュニティーをつくることが私たちの仕事」と語る。
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