薬局やドラッグストアで販売されている身近な薬を正しく使う能力を身につけさせようと、来年4月から中学校で医薬品に関する授業がスタートする。医薬品に関する授業は高校で行われてきたが、生涯を通じて健康を維持するために欠かせない知識として義務教育で取り上げることになった。家庭で医薬品が話題に上る機会が増えそうだ。(櫛田寿宏)
◆主作用と副作用
新しい学習指導要領(小・中・高校などが編成する教育課程の基準)が平成24年4月、完全実施。21年6月完全施行の改正薬事法で、一般薬品がコンビニエンスストアなどでも販売されるようになり、義務教育段階での学習が盛り込まれた。
中学での医薬品教育のポイントは、薬には「主作用」と「副作用」がある▽使用回数や使用時間、用量などの使用法がある▽正しく使用する必要がある-の3点。
例えば、抗ヒスタミン薬では、一般に皮膚の「かゆみ」を軽減するのが主作用とされる。一方で、眠気を催させることがあり、自動車を運転する場合などには好ましくない作用なので副作用とされる。しかし、就寝時に「かゆみ」のため寝付けない場合には、眠気は主作用ととらえることができる。こうした薬に関する基本的な知識は、これまで義務教育の現場で教えられることはなかった。
このほか、地域には保健所や病院、医院など健康増進や病気の予防に役立つ施設があり、これらを有効利用する必要があることの理解も目指す。
指導にあたって文部科学省は、学習指導要領の「解説」を通じて各家庭の薬箱にどんな医薬品が備えられているかなど、具体的な例を取り入れるよう求めている。各学校に配置されている非常勤の学校薬剤師も、専門家として授業に積極的にかかわることを提案。教員と学校薬剤師によるチームティーチング(2人1組で行う授業形態)も有効としている。
◆自然治癒力を知る
飲み薬には錠剤やカプセル剤など、用途によって形が異なることなどに気付かせることで興味・関心を抱かせることも提案している。学習指導要領の範囲を超えた内容だが、「触れることで学習への意欲を高め、生徒が自分自身の進路について考えるきっかけになる可能性がある」(文科省)としている。
教育現場には「医薬品について教育することで、体調が悪くなるとすぐ薬を飲むようになってしまうのではないか」という懸念もある。このため、体には自分から悪い所を治そうとする「自然治癒力」が備わっていることを教え、医薬品は病気の原因を取り除くことで自然治癒力が十分に働くようにするという役割にも言及することが重要になりそうだ。
兵庫教育大大学院の鬼頭英明教授は「親よりも、学校で勉強した子供の方が医薬品に詳しいというケースも増えるだろう。医薬品についての知識が広まるきっかけになることに期待している」と話している。
■新学習指導要領 武道や道徳、食育…
全国の中学校で平成24年度から完全実施される新学習指導要領では、国語・社会・数学・理科・保健体育・外国語の各授業時間が、3年間で約1割増加する。
伝統や文化に関する教育の充実が図られ、男女ともに武道が必修。道徳教育が拡充され、先人の伝記や自然を賛美する文章などに親しむ機会が増える。挨拶、規範意識、自他の生命の尊重、社会への主体的な参画についても指導を行うようになる。
食育(望ましい食習慣の形成)や消費者教育など時代の変化に対応する授業も取り入れられる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111026-00000133-san-soci