福島第1原発事故で放出された放射性物質の「除染」について、長期化への不安が住民の間で広がっている。山際の地域では除染後も、雨が降る度に、山から放射性物質を含んだ落ち葉や土砂が流れ込み、放射線量が再上昇した例も。7割が山地の福島県。都市部にも里山が多い。国は年間被ばく線量が1ミリシーベルト以上の場所で自治体が除染する費用を負担する考えだが、住民は「山の近くは繰り返し除染するしかない。その費用もちゃんと出るのか」と心配する。
福島市は7~8月、市内でも線量が高い大波、渡利地区で除染実験を行い、数日~1週間程度後に線量を再調査した。すると計885地点中7地点で、除染後の数値が除染前より高いという結果が出た。毎時3.67マイクロシーベルトから同4.63マイクロシーベルトに上がった側溝もあった。市は「山の近くや、山から水や土砂が流れ込んだポイントで数値が上がった」と分析する。
大波地区に住む八巻祐子さん(52)の自宅裏には里山が迫る。まとまった雨が降ると山から庭に土砂が流れ込む。玄関先は毎時1マイクロシーベルト以下だが、庭は2マイクロシーベルト超。「どこもうちと同じ状況」と訴える。
渡利地区で息子夫婦と孫娘2人の6人暮らしの裏沢利夫さんは、市民団体の調査で、自宅脇の水路から30万ベクレルを超える高濃度の放射性セシウムが検出された。「一度だけの形式的な除染では意味がない。定期的に実施できないのなら、住民の安心にはほど遠い」
森林の汚染実態について調査してきた農水省は9月30日、宅地などとの境から20メートル程度の範囲の森林の落ち葉などの除去が効果的との中間とりまとめを公表した。だが、その中でも、常緑の針葉樹については「葉にも放射性セシウムが蓄積しており、通常3~4年程度をかけて落葉する」として継続的な落ち葉除去が必要と認めた。
2年間で全域の生活空間の線量を毎時1マイクロシーベルト以下にする計画を立てた福島市。今月中にも大波地区で本格除染を始める。山林については未定だが、国の「20メートル指針」に対し、地権者らの同意を条件に75メートル内部まで腐葉土を取り除く方向で検討している。除染は繰り返すしかないとみているが、長期的な財政支援が得られるのか、国からの回答はないという。
「汚染土」の置き場の問題も深刻だ。国は国有林の活用も検討し始めたが、伊達市の担当者は「全域の『森林20メートル』は広大。大量の土砂を置く場所の確保は本当に難しい。それに人手はどうするのか」と指摘する。
また、森林にはさまざまな役目がある。9月末に緊急時避難準備区域から解除された川内村。9割近くが山林で全域が井戸水や流水で生活する。村は約20年かけて山林全体を除染する計画だが、担当者は「水源を保つためにも山林は必要。木を伐採せず、森林機能を保持したまま除染する方法はないんでしょうか」と苦悩を語った。
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