冬眠を控えたツキノワグマが、エサを求めて人里周辺に出没する危険性が最も高まる時期になった。県内のクマ目撃情報が4年ぶりに1000件を超えた昨年度は、そのほぼ半数が10月に集中しただけに、今年も緊張感につつまれる。県によると、今年はクマの好物であるブナの実が「豊作」で、クマが頻繁に人里に出没する恐れは少なそうだ。しかし、「残飯の味」を覚えたクマが再び人里に接近する可能性は否定できず、県は改めて注意を喚起している。
ツキノワグマの栄養源となるブナなど5種類の木の実の状況について、県が280地点で調べたところ、クマが最も好むブナの実は一部で例外はあったものの、対象とした2037本のうち70%弱が豊作で全体として「おおむね豊作」だった。
昨年は調査をしていなかったが、専門家によると県内の木の実は凶作で、これが人里周辺へのクマの頻繁な出没につながったという。目撃情報は昨年10月に592件、平成22年度内で1229件寄せられ、21年度の136件から10倍近くに膨らんだ。人が襲われる被害も10件11人に達し、452頭が捕獲・殺処分された。
一方、今年度の目撃情報は9月27日までで162件と、22年度上半期(4~9月)の300件に比べてほぼ半減した。ただ、けが人などの被害が2件3人あり、気が抜けない状況は続く。
県内に生息するクマは推定約1100頭弱。県は「生息数の12%以下」とする国の捕獲指針に基づき、捕獲・殺処分の上限を年128頭に決めた。今後、各地域振興局の「被害防止対策チーム」を通じて、クマが人里に出てこないように山と人里の間に広がる放置森林の伐採、未収穫の果実・野菜を早期処理するよう呼びかけていく。県県民生活・環境部の田海直樹参事は「クマは頭がいい。油断しないで対策を進めてほしい」と話している。
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