原発から主に20~30キロ圏の緊急時避難準備区域が30日、解除された。だが、インフラや市民サービスの復旧は道半ばだ。特に医療サービスの不足は深刻。南相馬市は常勤医が震災前から半減し、県全体でも約12%の医師が自主退職した。医療現場からは「国の強制力がなければ医師拡充は期待できない」(南相馬市健康づくり課)と悲鳴が止まらない。(中川真)
避難した住民が帰還するための大きな条件のひとつに医療サービスがある。しかし、緊急時避難準備区域から解除された南相馬市原町区にある同市立総合病院では、震災前の3月1日に21人いた常勤医が10人(8月1日現在)に半減した。
この結果、18科あった診療科のうち、産婦人科や眼科など6科が休診したままだ。「市内での出産は2つの民間医療機関に委ねるしかない」(南相馬市)という。仮に除染が進んでも、妊産婦が安心して帰還できる環境とは言い難い。
入院機能の弱さも深刻な問題だ。同市内の各病院は震災前、計1329病床を擁していたが、震災後の避難や規制の結果、現在機能しているのは285床だけだという。
県病院協会の前原和平会長(白河厚生総合病院院長)は、「震災前から医師不足が深刻だった地域で、一旦離れた医師復帰は難しい」と指摘する。
同協会が7月、県内127病院に行った調査(54病院が回答)でも、浜通りや県北・県中を中心に、震災前に1168人いた医師のうち、67人が3月末までに離職し、7月までに全体の約12%にあたる計135人が離職した。
看護師も同様で、震災前は6554人いたが、7月までに464人(約7%)が離職している。
日本医師会や日本薬剤師会などでつくる「被災者健康支援連絡協議会」では全国から医師派遣を続けているが、数週間の短期支援が多いのが実情だ。「施設説明などで期間が終わってしまう。半年、1年来てほしいのだが」(前原会長)という。
南相馬市では「解除されても見捨てられた状況は変わらない」(飲食業女性)との憤りは住民に根強い。全面帰還に向け、国の幅広い対応が求められる。
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