女性の社会進出の進展などに伴い、35歳以上で初めて出産する「高年初産」の人が増加傾向にある。リスクが伴うともされる高年初産だが、日頃からの適切な体調管理でトラブルを防ぎたい。(織田淳嗣)
◆4人に1人
厚生労働省の人口動態統計から算出すると、出生に占める35歳以上の母親の割合は年々増加。出生数ベースで昭和45年の4・7%から、平成22年は23・8%に伸びた。第1子の赤ちゃんのうち、母親が35歳以上だったのは昭和45年は2・0%。平成22年は17・1%と8・5倍になっている。
民間の調査でも、高い年齢での出産に積極的な意識がうかがえる。朝日生命保険(東京都千代田区)が今年6月、子供のいない20~40代の既婚女性1千人に行ったアンケートによると、子供がほしいと思う人は741人。望む年齢の平均は36・21歳だった。
回答者は20代288人、30代293人、40代160人。このうち、20代が望む年齢は平均30・11歳。30代は37・47歳、40代では44・88歳だった。調査では、「40代以降も(出産に)前向き」とまとめている。
◆20代より厳密に
ただ、35歳以上では妊娠の確率は低くなり、胎児の異常率が増加。血管の老化などで生活習慣病にかかりやすくなっており、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの疾病の発症率も高まる。妊娠糖尿病では血糖を制御できずに赤ちゃんが胎内で死亡、流産が起こることもあるという。
こうした疾病は、早期発見と塩分を控えたバランス良い食事、適度な運動など体調管理を的確に行うことで防ぐことができる。
松山赤十字病院(松山市)の本田直利・産婦人科部長(53)は、「パンやパスタといった普段の食品の中にも、気付かないところで塩分が含まれているので気をつけてほしい」と呼びかける。体重の増加を控え、一般的な妊娠中の注意をより厳密に守ることが必要だ。本田部長は「高齢の人は、かかりつけ医の健診と適切な周産期管理を受けることが大切です」と話す。
一方で、母体の健康面では負担が増えるが、30代以降の出産は20代に比べて経済基盤が整っているなどのメリットもある。
鹿児島・徳之島に住む主婦(36)は20代からのOL生活を経て、34歳で元気な女児を出産、子育てに奮闘中だ。病院では、周りの妊婦は20代より30代が多かったという。「高い年齢での出産になったのは、仕事や趣味に生きてきた自分の都合。『今は高齢出産も普通になってる』と思い、リスクがあることの自覚は足りなかった」と振り返る。
ただ、20代で社会人経験を積んでおいたことで社交性が芽生え、島の子育てサークルにもなじみやすかった。「体力的にはしんどかったが、精神的には落ち着き、『こういう時期もあるかな』と思い、子育てできている。もう少し若くて、面白いと思ってる仕事を中断して子育てをしていたら、思い通りにならない毎日にもっと戸惑っていたのではないか」と話している。
【用語解説】高年初産婦
日本産科婦人科学会(東京都文京区)では、35歳以上の初産婦を「高年初産婦」と定義している。分娩(ぶんべん)障害、染色体異常児などが増えるという理由から「要注意妊婦」としている。
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