東日本大震災の発生から11日で半年。収束の見通しさえつかない東京電力福島第1原発事故の影響などにより、県内では今なお福島県などから6539人(9日現在)が避難生活を送る。中には、故郷と家族から離れ、福祉施設で暮らす高齢者の姿も。県内でも高齢化で増える「災害弱者」の対策が急がれている。【岡村昌彦、小林多美子、畠山哲郎、塚本恒】
◇夫の遺骨、福島に残し 家族と離れ、行き場のない不安--長岡で施設暮らし、75歳・荒木さん
「いつかちゃんと納骨したいね」
車椅子に乗った荒木栄子さん(75)はつぶやいた。荒木さんの夫は今年1月5日、80歳で病死した。納骨は3月12日の予定だった。
しかし前日の11日に大震災が発生。福島第1原発事故で、福島県浪江町の施設にいた荒木さんは、職員と共に別の施設を転々と避難した。21日、長岡市の特別養護老人ホーム「槙山けやき苑」にたどり着いた。夫の遺骨は、原発から約20キロにある南相馬市の自宅の仏壇に置いてきたままだ。
現在同苑には、荒木さんら福島県から避難してきた高齢者が16人いる。花見や盆踊りなど入所者同士の交流イベントがあり、南相馬市内で暮らす長男(53)夫婦もたまに顔を見せに来る。それでも、他の入所者の元に家族が訪ねてくると、うらやましく感じるという。
同苑介護総括主任の佐藤みどりさん(47)によると、入所者らは避難後1~2カ月すると、「福島に戻れるのか」「家族は面会に来るのか」と漏らすようになった。佐藤さんは「家族とのつながりを一番心配している」と指摘。「福島で暮らす家族も生活が大変。それが分かるから、はっきり口に出しにくい」と説明する。荒木さんも「できれば家族と近くに住みたいけど……」と言葉を濁す。原発事故の収束が不透明の中、行き場のない不安は消えないままだ。
先日、長男が一時帰宅したら、仏壇にある夫の骨つぼは地震にも倒れずに無事だった。今はやむなく残したままだが、佐藤さんが「ご主人、踏ん張ったんだね」と話しかけると、荒木さんはうれしそうにうなずいた。
県によると9日現在、県内の老人ホームなどに避難している高齢者は147人。3月26日時点の173人からほとんど減っていない。
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◇災害時要援護者 地域で支援、広がる動き
高齢者や障害者ら自力での避難が困難な人を自治会などが事前に把握し、緊急時に備える「災害時要援護者支援対策」が全国で進められている。県内では30市町村全てで要援護者の名簿を作成している。だがその一方で、要援護者ごとに作る個別プランが整備されているのは、柏崎市や弥彦村など5市町村にとどまる。災害弱者対策は始まったばかりだ。
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