熱中症が心配される季節が近づいてきた。福島第1原子力発電所の事故に伴う電力不足が懸念される今夏は、エアコンが思うように使えない事態も予想される。本格的な夏を迎える前に暑さに強い体をつくるとともに、服装を工夫したり、冷却グッズを使用したりして熱中症を予防したい。(森本昌彦)
◆抵抗力を高める
気象庁が5月25日に発表した6~8月の3カ月予報によると、平均気温は沖縄・奄美で平年より高く、西日本(九州-近畿)と東日本(関東甲信、北陸、東海)で高いか平年並み、北日本(東北、北海道)で平年並みの可能性が大きいとされる。
ただ、今年は例年と大きく異なる点がある。福島第1原発の事故、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の運転停止のため、電力不足という事態が訪れるかもしれないということだ。エアコンなどの空調設備が使えなくなる可能性もあり、節電意識の高まりから、エアコン使用を控える人の増加も予想される。
横浜国立大学教育人間科学部の田中英登(ひでと)教授(環境生理学)は「これまではエアコンで対策をしていたが、今年はできないかもしれない」と指摘。熱中症予防のためには、事前の準備と情報のチェック、服装などの工夫が重要だという。
真夏を前にやっておきたいのは、暑さに対する抵抗力を高めておくこと。体温は汗を出すことで下げられるため、田中教授は「汗をかく能力を磨いておくことが大事だ」と話す。
元気な成人や高齢者の場合、具体的には2日に1回、30~60分程度、ウオーキングやジョギングなどを行うといいとされる。2日に1回、30分間ウオーキングをした場合、4~8週間で効果が出るといわれる。汗をかいた際は、こまめに水分を補給することも大切だ。
◆情報収集し判断
暑くなったら、天気や熱中症の情報をチェックし、運動の可否などを判断したい。その際、参考にしたいのが「暑さ指数(WBGT)」という指標。例えば運動では、日本体育協会(東京都渋谷区)がWBGTの値によってどうすべきかという指針を出している。
服装に関しては、屋外にいるときは日射を受けないことが大切なため、長袖で風通しの良い服装が基本。汗をかくことを前提に、吸汗・速乾性に優れた素材のものを選んだり、こまめに着替えたりする工夫が必要だ。
逆に屋内では、日射がないため、半袖など皮膚を露出する服装が効果的だという。
節電のためエアコンを控えるという人向けに、田中教授は「エアコンの代わりに冷却グッズで体を冷やし、体温を下げてほしい」と勧める。水を含めて使用する冷却バンドや氷を入れて使うアイスバッグなど、さまざまな商品が販売されている。
ただ、お年寄りが無理にエアコンの使用を控えるのは危険という。暑さに対する感覚が鈍くなっているためで、田中教授は「高齢者は無理をせず、ある程度エアコンを使ったほうがいい。その分元気な人が冷却グッズなどを活用して、節電をすればいいのではないか」と話している。
【用語解説】熱中症
気温や湿度の高い環境で起こる暑熱障害の総称。熱失神▽熱けいれん▽熱疲労▽熱射病-の4つに分類される。症状が重いと命にもかかわることがある。総務省消防庁の統計によると、昨年7~9月に熱中症で救急搬送されたのは5万3843人に上り、167人が死亡している。搬送者に占める高齢者(65歳以上)の割合は平成20年が39・5%、21年が40・9%、22年が46・4%と、年々増える傾向にある。
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