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放射能の恐怖…正しい知識で身を守れ「誰でもわかる放射能Q&A」

深刻な状況が続く東京電力福島第1原発事故。1-3号機で「溶融貫通(メルトスルー)」が起きた可能性があるなど状況が明らかになる一方、漏れ出たとされる放射能の積算量は増え続けている。目に見えない危機から大切な人を守るためには何を、どこまで気をつければいいのか。(文・澤田大典 写真・高橋朋彦)

--今、一番気にすべきことは何でしょう

「原発の半径20キロ圏内はおおむね空間線量は高いが、作業員以外はほとんど退避しています。気になるのは、福島市や郡山市の線量が6月になってやや上がっている点。また、大量の汚染水の行方も深刻です」

--海に流れ地下水に浸透したのでは?

「炉心の冷却水の総量と、タービン建屋やトレンチなどにある目に見えている水の量に差がある。海水をモニタリングしたり、地下水脈への拡散の状況を調べ、地下ダムを造る必要性があるかなどを検討すべきです」

--放射性物質。最も怖いのは?

「初期段階ではヨウ素。甲状腺に溜まりやすくがんを引き起こすし、子供には蓄積しやすい。その吸引は最初の数日間が勝負だったが、半減期が8日と減り方が早いため、ほとんど消えかけている。今、注意すべきはセシウムです。半減期が30年と長く、筋肉や腎臓などに留まりやすい。野菜など食べ物から体内に入ることもあるが、食べる前に水で洗えば大部分を落とせます」

--ストロンチウムやプルトニウムはもっと猛毒だと聞きますが?

「ストロンチウムは骨に留まりやすく、放射線を出し続けます。プルトニウムはかつて、米ソなどの大気圏中の核実験でも広く世界にバラまかれたし、40年ほど前『1粒でも肺に吸い込んだら肺がん発症』とのトンデモ理論が流布したが、それはないとわかった。今のところは、どちらも気にする量ではありません」

--しかし、25年前のチェルノブイリ原発事故を機に、がんとの関係が

「議論が分かれるが、医師が当時、チェルノブイリ周辺を追跡調査したところ、放射性物質とがん発生率が関連しているという明確な証拠はなかったのです」

--東京から避難する人もいますが

「その必要はない。年間被曝量が100ミリシーベルトに達すると発がんのリスクが1%増えるとされていますが、そもそも人間自身はカリウム40と炭素14という放射性物質を持っていて、年間300マイクロシーベルトの自己被曝をしている。過度に怖がることによるストレスのほうがはるかに体には悪いんです」

--原発事故のツケと“脱原発”。今後のエネルギー政策の行方は、子供たちの未来にも直結

「原発事故が起きれば今のような厳しい状況になることを身をもって体験した。一方で日本は原子力なしでやっていけるのか。今こそ、落ち着いた視点で知識を得、見極めてほしいものです」

【取材後記】

大学で物理を専攻したが、本格的に原子核工学とのつきあいが始まったのは三菱総研に入ってから。1979年3月に起きた米スリーマイル島の原発事故がきっかけ。

「当時、歴史上初の燃料溶融事故で、今日の福島第1原発事故よりも騒ぎは大きかった。あのとき、風評被害がいかに恐ろしいかを知った。その教訓を踏まえ、テレビでも冷静に正確な情報を伝えられるように心がけてきました」

福島第1原発事故では、東電や政府の情報が錯綜したため、「メルトダウン」「メルトスルー」という扇動的な言葉が踊り、不信感と悲観論が一層広がった。「安全」との見解を出してきた澤田氏には「御用学者」といった声が浴びせられたが-。

「御用、御用だと言われてもねえ…。スリーマイルでも、原子炉のふたを開けて実態が分かるまで5~6年かかった。目に見えない以上、怖い話を信じてしまいがちなのも仕方ないですが」

また、「自分の中で納得できる情報をバランスよく集め、心配しすぎないよう生活することが大切」という言葉には納得できるものがあった。

■「誰でもわかる放射能Q&A」イースト・プレス800円 事実を知れば怖くない-。原発事故で、放射能汚染に対する恐怖は日本列島だけでなく世界中に広がりつつある。空気中の汚染はどこまでひどいのか、小中学校の校庭で子供を遊ばせることはできるか、野菜や魚は食べても大丈夫なのか。放射能にまつわる65の質問に、澤田氏がわかりやすく答えている。

■さわだ・てつお 1957年、兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルー工研究所客員研究員を経て現在は東京工業大学原子炉工学研究所助教。福島第1原子力発電所の事故を受けて、パニックに近い状況が起こるなか、テレビ番組などでは冷静な分析に終始した。赤いめがねとダンディーな容姿から、熱烈なファンもいる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110630-00000016-ykf-ent

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