東京電力福島第1原子力発電所の事故による電力不足で、「節電」への対策が叫ばれている。企業の中には「サマータイム」の導入や時差通勤を奨励し、始業時間を早めるところもある。日照時間の長い夏、自然エネルギーの有効活用は重要だが、「朝が苦手」「起きられない」という人にとって始業時間が早まるのはつらい。朝が苦手な人への“特効薬”はあるのか。専門家に聞いた。(道丸摩耶)
◆さまざまな理由
「起きられない」には、さまざまな原因が考えられる。睡眠医療認定医でむさしクリニック(東京都小平市)の梶村尚史(なおふみ)院長は「眠れないという悩みに比べ、起きられないことが問題と思う人は少ない。しかし、眠ることと起きることは表裏一体」と話す。
梶村院長が監修した『起床術』(河出文庫、620円)によると、起きられない原因には、睡眠時間が足りない「睡眠不足型」▽生活習慣に問題がある「悪い生活習慣型」▽宵っ張りの朝寝坊による「体内時計故障型」▽ストレスで夜中に何度も目が覚める「緊張型」-など、さまざまなタイプがある。心因的な要因や「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などの病気が起きられない理由になっていることもあり、そうした場合は速やかに医療機関に相談することが望まれる。
ただ、そうした病気がないのに「起きられない」という場合は、生活習慣を見直すことで改善できる。人間の体内時計は、地球周期の24時間よりも長い25時間周期とされ、放っておくとどんどん宵っ張りになる。体内時計をリセットするには朝に光を浴びてメラトニンというホルモンの分泌を正常化することだが、「起きられない」人にはこれがつらい。
◆必要な睡眠時間
それならば、強制的に起きられる方法を探ろう。
「眠気は、起きてから14~16時間たたないとやってこない。早起きしようといつもより早く布団に入っても、起きたのが遅ければ眠れないのです。まずは一度、早く起きることが重要です」と語るのは、快眠セラピストの三橋美穂さんだ。
三橋さんによると、必要な睡眠時間は人によって違う。一般的には睡眠時間が6時間を切ると日中の作業効率が落ちるといわれているが、人によっては短時間で大丈夫な人もいる。
「どのくらい寝たら調子がいいかを考えれば、自分に合った睡眠時間が分かります。そこから逆算して眠る時間を決めると、比較的楽に起きられます」
布団から出ないと止められない場所に目覚まし時計を置くなどの工夫のほか、朝になると明るくなるライト型の目覚まし時計も効果的。起きたらまず、カーテンを開けて日の光を浴びるといい。ミントやローズマリーなどのアロマや簡単なマッサージで体に刺激を与えることも、覚醒を促す。こうした工夫で早起きができるようになれば、それを習慣化させることが重要となる。
なお、適度な晩酌はいいが、それが寝酒になってしまうと眠りが浅くなり、起きにくくなる。テレビやパソコン画面は神経を刺激して眠りにくくするので、寝る前は見ない方がいい。こうした工夫で「眠りの質」を高めることも、起きやすくする方法だ。
■暑さと湿気対策で快眠を
節電のこの夏、“眠り”を阻害する要因となりそうなのが暑さと湿気だ。
三橋さんによると、人間は体温が下がると眠気を感じ、睡眠中はさらに体温を下げることで熟睡する。しかし、蒸し暑いと汗が蒸発せず、体温が下がらない。
さらに、頭が足より約4度低いと快適に眠れるといわれており、冷やしたタオルをポリ袋に入れて枕の上に置くなどの方法は効果的だ。また、敷布団の上に通気性のあるイグサや竹でできたシーツを敷いたり、脇や足に隙間ができる抱き枕を使ったりする工夫も「快眠」の助けとなりそうだ。
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