[ カテゴリー:障害高齢 ]

隻腕の少年

笠井です。

栃尾から防災センターへ向かう帰り道の豊田小学校近くに差し掛かった時のこと。
その時間はちょうど下校の時間帯だったようで、黄色い帽子をかぶった子ども達が大勢歩いていた。

何とはなしに車の速度を緩めてゆっくり走っていると、左手草むらの中から少年が飛び出してきてビックリした。
半そで姿の少年の左腕は、上腕の中間、半そでの袖口からちょっとだけ腕が見える程度のところから下がなかった。

少年は草むらから飛び出してくるなり、「うわぁー、うわぁー」と顔を空のほうに向けて泣き叫んでいた。

通りかかり様にその様子を見た私は、すぐに車を止めようと思ったのだが、私の車のすぐ後ろを後続車が走っていたため、50mほど走らせて切り返し、少年のそばまで行って、車を止めて、車の外に出て、少年に声を掛けた。

「おーい、どうした?何があったの?なんでそんなに泣いてんの?」

子どもは泣き顔のまま、
「ランドセルのカバーが川に流れたー。どこかに行ったー。」

いじめられでもしたのかと心配しながら声を掛けた私だったので、その理由を聞いて、ちょっとだけほっとして、
「なぁーんだ、そんなことか。おじさんが取ってあげるから、どこに落としたのか言ってみろ。」と言うと、、、
子どもは、なおも泣き顔のまま大きく首を振り、
「うんうん、もういい。だって、流れていっちゃったんだ。もうダメだよ。もうダメだよぉぉぉ。」
と言いながら、さらに泣きじゃくった。

「そっか、いいんだな。おじさんが取ってあげなくて本当にいいんだな。」
「だったら、もう泣くな。頑張れ。泣いていると笑われるぞ。頑張れ。」

私がそう言うと、少年は少しだけ泣き声が小さくなって、私のほうをチラッと横目で見て、「分かったよ、おじさん」と言っているような感じでウン、ウンと首を縦に振りながら歩いて行った。

10mほど歩いて、少年がこちらのほうを振り返った。

私は、少し大きな声で、
「頑張れ。頑張れ。負けるな。頑張れ。」

少年は、また、ウンウンと首を振って歩いて行ったが、
しばらく様子を見守っていると、そこから少し進んだ辺りから、少年の泣きじゃくり声が、また聞こえてきた。
「ウウォーン、ウウォーン」とまるで犬の遠吠えのよう、後ろ姿の少年の顔は、また空のほうを向いていた。

近くには小さな小川が流れている。
ちょうど、子どもが飛び出してきた辺りだ。
川に落としてしまったカバーを取ろうとして、草むらの中に入っていたのが容易に想像できた。

川沿いを少し歩いてみて、少年のカバーを探してみた。
もしも、見つかったら届けてやろう。
片腕のない特徴を小学校に話せば、きっと特定できるだろうと思ったからだ。
でも、見つからなかった。

川の水は決して少ないほうではない。
少年自身が川に落ちなくて本当に良かった、と思ったと同時に、落としてしまったカバーを拾い上げようと必死になっていた少年の姿が目に浮かんできた。
両手さえあれば、右手でどこかにつかまり、左手を伸ばして、もしかしたら、カバーを拾うことができたかもしれない!?
どれほど悔しかったことだろう。
顔を空に向けての大泣きは、もしかしたら、そういうことだったのかなぁ!?

少年の悔しい気持ちを想像したら、、、自然に涙があふれてきた。
「頑張れ! 泣くな!」などと言っておきながら、俺のほうが泣けてきてしまった。

俺と言う男はまだまだ青い。
ダメだ。

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コメント(2)

  1. そうやって男になっていくんだね。子供も大人も、本当は何があったのかわからないけど・・・笠井おじさんは最高のフォローしたんじゃないかな。カッコいい大人に逢える事が魂の財産になりますよ。いっぱい頑張っていっぱい泣きましょう。

    返信

    タガワマサト

  2. タガワ“おじさん”、コメントありがとう。(おじさん呼ばわり返しだぁ)

    返信

    笠井 徳昭

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