[ カテゴリー:社会 ]

「婚活なき結婚」はありえない時代

「なぜ婚活(結婚活動)しないと結婚できない時代なのか?」

地方自治体などの依頼で、私がこういったテーマで講演をすると、聴衆の半分は、婚活中の独身の方々ではなく、そのご両親世代です。ご両親世代にとっては、「私たちが当たり前にしてきたことが、なぜ自分の優秀な娘や息子にはできないのか?」と、とても不思議なのです。

なぜ、「当たり前のこと」ができないのか?

それは、現代では結婚が「当たり前のこと」ではなくなったからです。

自分の選択のうえで、結婚したいと思う人は結婚のための努力をする――これが「婚活」の本来の意味です。決して「合コンに参加」したり、「結婚相談所にエントリーする」ということではありません。

「自分の相手は、長い時間をかけて恋愛をしながら、自分で探す」という、欧米では当たり前のことが、いま日本でもやっと始まったのです。

◇「出会いのシステム」の崩壊◇

「みなさまはどうやって結婚したのでしょうか。運命の出会いに導かれて? 自然の成り行き?」

講演のときには必ず、独身の方にはご両親の出会いについて、親御さんには自分の出会いについて、聞いてみます。そうすると、「お見合い」「職場結婚」「学生時代からのつき合い」の三種類がほとんど。身近な縁のなかで結婚されています。

親世代の若いころは、真面目に働いている人なら、誰かが縁談をもってきてくれました。また職場では、「女性は男性のお嫁さん候補」として採用され、「会社のバス旅行は独身同士が隣り合わせに座るようにされていた」という話も聞くくらい、会社は社内結婚を勧めていました。会社での出会いは一見、恋愛のようにみえて、会社が世話してくれる「集団お見合い」のようなものだったのです。

つまり、親世代には「設定された出会い」があった。地域が、会社が、結婚の世話を焼いてくれたのです。

しかし、いまの独身者には、誰も見合い話をもってきてはくれません。会社側も、女性を「お嫁さん候補」としてではなく、男性のライバルにもなりうる「働く女性」として採用します。また、セクハラや、職場の人間関係の問題もあって、男女とも「社内恋愛はイヤ」という人が増えている。過去30年間の初婚率の低下は、約5割が「見合い結婚の減少」によって、約4割近くが「職縁結婚の減少」によって説明できます。

またかつては、出会いに加えて、結婚への背中を押してくれるいくつかの要因がありました。

まず、「つき合ったら、必ず結婚するもの」という周囲からのプレッシャーです。とくに社内恋愛は、なるべく秘密に行なっても、どこからかバレてしまうもの。そこで結婚しないと大騒ぎになってしまうほど、「恋愛=結婚」が直結していました。しかしいまは、社内でつき合っても結婚しない人が多い。「恋愛=結婚」の方程式は、もはや成り立ちません。

また以前は、年齢も背中を押す大きな要因でした。「クリスマスケーキ」「大晦日」――かつては女性の24歳、29歳をこう例えたものです。

しかしいまや、年齢に押された結婚もほとんどなくなりました。「何歳だから結婚する」というよりも、「理想の相手に出会ったら結婚する」という意識のほうが強い。げんにいま、40代、50代も婚活の第一線にいますし、再婚などのため60代以上の方々の婚活も盛んです。

かつて結婚が「当たり前」にできたのは、狭い地域や会社という「釣り堀」のなかで糸を垂らしているようなものだったから。「釣り堀」がなくなってしまえば、広い広い大海に出て、釣りをしなくてはいけません。広大な海のなかで自分にピッタリの魚を探すのは、とても難しい。それが現代の結婚の難しさなのです。

日本に存在した、地域や会社に「のっていけば結婚できる」ベルトコンベアーのような便利なシステムは崩壊してしまった。会社と家の往復だけでも結婚できたのは1980年代まで。結婚したければ自分で動く。これが「婚活時代」なのです。

◇年収600万以上が条件!?◇

そして、いまの男女の結婚を大きく妨げているもの――それは経済的な問題です。

独身男性の年収を調査したところ、年収400万円未満の人が8割でした。しかし女性は、じつは結婚相手に「年収600万円以上」を望んでいるというアンケート結果があるのです。

男性の年収400万円でも、女性が200万円ほど稼げば、年収600万円になります。しかし、「出産=退職」が7割という日本では、女性が働き続けることは容易ではありません。

そのなかで現代の男性たちは、「結婚して妻子を養っていく自信がない」と結婚そのものにためらいを感じ、できるだけ先延ばしにしようとします。また8~9割の男性が「結婚後も妻には働いてほしい」という。女性のほうは「一刻も早く経済的に安定した結婚をしたい」と望むのですが、それをかなえてくれる男性は、ごくひと握りなのです。

いま婚活市場は、少数の安定した企業に勤める男性をめぐって、多くの女性が争う、シビアな市場です。といっても、かつての3高(高学歴、高収入、高身長)は人気がなく、「安定」「信頼できる(浮気しない)」「一緒にいて楽」な人を、女性たちは求めています。

さらにいま、意外なほど「専業主婦」になりたい女性が増えている。アンケートでは、全体の3割ほどの女性が専業主婦志望。ただ、「実際になれると思う」人は6%。かつて誰もがなれた専業主婦は、いまや憧れの的です。

つまり、女性たちの意識は昔もいまもそれほど変わっていない。「結婚したら男性の収入がメイン」という気持ちは母親世代と同じなのです。キャリアウーマンに憧れたのはバブル世代のみ。その後の厳しい不況と就職氷河期で、女性たちの働く意欲はすっかり減退しています。

このような「専業主婦になりたい。お料理が得意なんです」という女性たちを、男性は「重い。背負いきれない」と感じてしまう。「子育て中は家にいたい」という、かつては「当たり前」だったことを望めば望むほど、結婚対象となる男性は少なくなる――。

私は、結婚したかったら年収100万円でも200万円でも働き続けましょう、と女性たちに呼びかけるのですが、「子育てと仕事の両立は苦しい」という先入観で、ほとんどの方がガチガチです。

「子育てのあいだ、養ってくれるだけの安定収入があって、引っ張ってくれる人」という男性と出会う確率は、本当に少ない。現在の「婚活をしても結婚ができない」状況の理由は、「養ってほしい女性たちの数に対し、養える、養う気のある男性の数が少ない」という単純な数の問題です。「男は女を養ってくれるもの」という「昭和結婚」から脱却しないと、女性は結婚できないまま年を重ねることになってしまいます。

ここで親世代は、「一緒に苦労するのが結婚」とお説教をしがちです。しかしそれは、日本経済が右肩上がりで、誰もが同じような幸せを手に入れられる希望があった時代だからこそできたこと。もしいまのご主人が、最初から「君も働いてくれないと、僕は養えないよ」といっていたら、あなたは彼を魅力的に感じましたか?「一家の大黒柱」だからこそ、いろいろと言いたいことも我慢してきたのでは……。

現代の女性たちは、このような母親の姿をみて、「男が養ってくれない結婚なんて価値がない」と思っているのかもしれません。男性に「一家を養う甲斐性」がなくなったいま、求められるのはそれに代わる結婚の魅力ですが、多くの女性はまだそれを見出せていません。「甲斐性のない男と結婚するぐらいなら、独身でもいい。だからこそ、手に職をつけたんです」という20代の薬剤師さんに会ったこともありますが、いま若い世代ほど選別が厳しくなっているようです。

また年収は妥協できても、「引っ張ってくれる男性」という条件こそが、結婚を妨げているともいえます。

「女の子とつき合っても、お金がかかるし気も使うし、めんどうくさい」

これは20代男子の言葉です。

いまの男子たちには「恋愛」よりも楽しいことがたくさんあります。女子のようにインテリアに凝ったり、趣味に走ったり……。またAKB48やアニメのキャラクターなど、都合のよい疑似恋愛の相手となら、傷つくこともない。薄ガラスのような神経の男子たちにとって、現実の恋愛はハードルが高いのです。

20代の恋人がいる女性に聞いたところ、ほとんどが「私から告白しました。だって待っていたら何も起こらないから」といいます。こういう勇気ある「肉食女子」はいいのですが、アンケートによると、7割の女子が「待ち受け女子」、つまり、恋愛は相手からのアプローチを待つ状態。「草食男子」と「待ち受け女子」とでは、恋愛の起こりようがありません。

新成人調査では、10人に7人は恋人がいません。日本の独身者の特徴は「恋愛していないこと」なのです。しかし、お見合い文化が廃れたいま、恋愛しないで結婚できる確率はゼロ%。「恋愛低体温」な男女が増えることこそ、結婚が少なくなるいちばんの原因かもしれません。

◇親世代は意識改革を!◇

誰もが当たり前に、同じ年代で結婚し、同じライフスタイルで生活し、同じ数の子供をもち……という「昭和結婚」の時代は終わりました。ですから親御さんは、「なぜ当たり前に結婚できないの?」とお子さんを責めてはいけません。もう親御さん世代の「当たり前」は当たり前ではないのです。そこで、未婚の娘や息子を抱える方たちには、必ず以下のような意識改革を提案しています。

・この結婚難時代、子供が独身であることを「恥ずかしい」と思わない

恥ずかしいと思うほど、誰にも相談できず、よい縁を逃します。

・親世代の結婚観を押しつけない(とくに娘の場合)

せっかく娘が結婚相手を連れてきても、「知らない会社に勤めている」「年収が低い」「あなたより偏差値が下の学校じゃないの」などと邪魔をする親御さんがいます。なかには、「お父さんと歳が近すぎる」と、歳の差婚を反対することも。いまの時代「結婚したい」という相手に出会えるだけでも、すごく幸せなことなのです。

・「女性が歳上」「(子連れ)再婚」「男女の年収や学歴の逆転」は当たり前

「再婚のお嬢さんなんて……」「子連れの女性との結婚は困る」「あなたより7つも歳上じゃないの!」といった揉め事も、息子をもつお母さんにはありがちなこと。どんな相手でも、息子さんが選んだ女性です。女性のほうが歳上、年収が上などの逆転婚の場合、息子さんが人生を歩むうえで頼もしいパートナーができたと歓迎してあげてください。再婚や子供がいる女性は「母性的で受け入れる間口が広い」ので、いまの男性たちにとっては「癒される」存在なのです。

女性にとって、「歳上、年収が上、学歴が上」の男性と結婚するという「上方婚」は、もう当たり前ではありません。いま男性の4人に1人が歳上の妻をもち、「できちゃった婚」も4人に1人にのぼります。リストラなどで男性が「専業主夫」となり、妻が一家の大黒柱であるというケースも増えていて、なんでもありの時代なのです。

・養子にこだわるより結婚が先

地方では長男長女しかいないことも多く、縁結びすら難しい。いまどき「養子」を望むと、娘さんは一生独身ということもあります。まず相手がいたら、盛大に結婚式を挙げ、「事実婚」で済ませるという選択肢もあります。子供ができたら、双方の姓を継いでもらうという、あとから形式を整える方法も考えてみてください。

・パラサイトは結婚の妨げ。子供を自立させることが結婚への早道

ある地方では、「独身者専用マンション」をつくって、パラサイトの娘や息子を入れてしまいました。そうすると、鍋パーティーなどの交流をして、どんどんカップルが生まれ、出生率も上がるという結果が――。

パラサイトの独身者が多い日本ですが、実家の居心地がいいと子供はいつまでも家から出て行きません。もし子供を結婚させたいなら、お子さんを独立させることを考えてください。いまはシェアハウスなどの安い家賃で、楽しく生活できる仕組みがたくさんありますから。

・両親が子離れをし、子供の幸せより自分が幸せな老後を設計しよう

「私たちは、老後はこういう計画なの。あなたはそれまでに出て行ってくれる?」と期限を切ったら、慌てて娘が結婚したという例もあります。娘や息子に囲まれた幸せもいいのですが、まだまだ若いうちに、夫婦二人の幸せを設計してください。そうして父や母が仲良く寄り添う姿をみせると、子供に結婚への憧れを起こさせ、「やっぱり一人では寂しいから結婚しよう」となります。

残念ながら、女性のなかには「夫が定年したら離婚したい」という決意を胸に秘めている方もいらっしゃいます。そういう場合も子供に打ち明け、毅然として自分の幸せを手に入れようとする姿をみせてあげたほうがいいでしょう。母親が不幸な結婚に耐える姿は、むしろ娘や息子の結婚を遠ざけます。その場合、「結婚はうまくいかなかったけれど、あなたを産んだことは本当に幸せだったわ」といってあげられるといいですね。

いま、日本の結婚は行き詰まっています。「男が養い、女は子育て」という「昭和結婚」を望むかぎり、「永遠の未婚」になってしまう恐れがあります。いまどきの女性が望む「養ってくれて仕事ができる人」と「優しくて子育てを手伝ってくれる人」は、じつは矛盾する条件です。そのうえ、「イケメンで……」というのは、ほとんど夢のような男性です。

「なぜ私は結婚できないのでしょう?」。こう聞かれるたびに私は、「あなたはこの世にいない男性を探しています」と答えています。「恋愛は出会った人としかできない」のですから。まだ見ぬ幻の相手を求めて、やみくもにお見合いパーティーや合コンをはしごするより、身近にいる「青い鳥」を探してみてほしい。そして何よりも「人を好きになってほしい」。その結果、シングルだったり、未婚で子供を産むという選択もあっていいのではないでしょうか?

いままでは「みんなと一緒」だった人生を、自分で選ぶ時代。それを考えるきっけとなる言葉が「婚活」だったのだと思います。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110530-00000001-voice-bus_all

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