気になる【糖質】の働きからだを動かすエネルギーのもと 繊維と一緒にとろう
若い女性の食事や生活の傾向を見ると「やせ指向で穀物をとっていない人、そして体を動かしていない人が圧倒的に多い」というのは、女子栄養大学短期大学部・栄養学研究室の松田早苗准教授。
糖質は砂糖のような糖や穀物などのでんぷん質の総称。体を動かすエネルギー源となる大切な栄養素だ。太らないよう控える人も多いが、「特に、脳や神経、赤血球はエネルギー源として穀物の主成分である糖質しか使うことができない」と松田准教授は話す。
しかも、控えすぎると、体内の脂肪を燃やす大事な代謝の“火種”まで消えてしまうことに!「エネルギー源として役立てるには、毎食、お茶碗1杯150gのご飯を食べてもまったく問題ない」(松田准教授)。
糖質はこんなに働いている
糖がないと脂肪も燃えにくい
私たちは糖質の多くを、米やパン、麺(めん)類などを主食にしてとっている。でも、ダイエットのためにと「おかずだけ食べ、ご飯などの主食を極力食べないようにしていると、脂肪が燃えにくい体になってしまう」と松田准教授。糖質を食べないでやせようとするのは若い女性には不向き。「糖質は脂肪を燃やす代謝系の大事な“火種”。糖質が不足すると脂肪が不完全燃焼を起こし、ダイエットも成功しにくい」(松田准教授)。
また、糖質が不足すると、体はたんぱく質を分解してエネルギー源にしようとするため、筋肉がやせてしまい、ますます代謝ダウン。糖質をとったら体を動かしてエネルギーとしてしっかり使う、これがかしこいやり方だ。
食物繊維を一緒にとれる穀物が一番いい
体のエネルギー源として欠かせない糖質。でも、とりすぎはやはり問題。内臓脂肪や皮下脂肪として体に蓄えられてしまうからだ。特に注意したいのが、白ご飯、白いパンなどの精白された穀類。血糖値が急上昇し、インスリンというホルモンの働きによって余った糖質が脂肪として蓄えられやすくなる。
「玄米やライ麦パンなど“黒っぽい主食”は血糖値を上げにくい。白い主食は極力食べない、と決めてしまうといい」と、糖尿病歴30年以上を自らの健康管理で乗り切る河合勝幸さん。「おにぎりなら、ワカメ入りや根菜の混ぜご飯など食物繊維が加わったものを選ぶ方がいい。お通じ効果も期待できる」(大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授)
甘い物ばっかりだと体調が悪くなる?
忙しいからといって、お菓子や甘い菓子パンをご飯代わりに食べていない? 「お菓子に含まれる砂糖は、穀物よりも糖質が吸収されやすく満足感を得やすいものの、洋菓子に使われるバター、生クリームに含まれる飽和脂肪酸などの“とりすぎ注意”の脂質を同時にとってしまう。また、主食、主菜、副菜、汁物、といったベーシックな食事と比較すると、圧倒的にたんぱく質や食物繊維、ビタミン・ミネラルなどが不足する」と松田准教授。甘い物は血糖値を急上昇・急降下させるため、肥満や糖尿病などメタボのリスクも高まっていく。「間食は、甘い食事ではなく、朝食、昼食、夕食の3食でとれない栄養素を補給する食事と考えて、ときには乳製品や果物、芋類を選んでみるといい。毎回の食事でしっかり糖質をとれていれば、次の食事までに我慢できないほどの空腹感は感じないはず」(松田准教授)。
この人に聞きました青江 誠一郎 教授
大妻女子大学 家政学部
農学博士。メタボリックシンドロームの発症を抑制する食品成分、機能成分の検証などをテーマに研究する。「生野菜はほとんどが水分。皮付き野菜を煮て食べると食物繊維がたっぷりとれる」。取材協力河合 勝幸 さん
クラブイスパノフィーロ代表
糖尿病歴30年以上を無事に乗り切ったノウハウをウェブサイト「On-line糖尿病ウォッチャー」で伝える。「疲れても、この食事をとれば回復できるという自分なりのスタンダード食を持つといい」。
監修/松田 准教授 取材・文・構成/柳本 操 イラスト/霜田 あゆ美
日経ヘルス 2010年6月号掲載記事を転載
この記事は雑誌記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110524-00000000-health-soci