【東日本大震災】福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故は、韓国の食にも大きな影響を与えている。政府機関や民間企業は、日本産や韓国産の食品に対する放射能検査を実施しているが、一部消費者による買い占めが起こるなど、不安感を拭えずにいる。東日本大震災から50日、韓国の流通・食品産業におけるこれまでの動きをまとめた。
食品医薬品安全庁(食薬庁)はこのほど、福島県産のキノコ類の輸入を中断すると発表した。同庁は以前から、福島県をはじめ、群馬県や栃木県、茨城県、千葉県の5県から輸入される農産物を規制してきたが、これに品目を追加した形だ。
また、輸入を制限している5県に、1都7県(宮城、山形、新潟、長野、埼玉、神奈川、静岡、東京)を加えた13都県で生産・製造された食品などについて、放射能基準値を超えていないとする証明書の提出を日本政府に対し要求している。
13都県以外でも、日本から輸入した食品に対しては放射能検査を行っている。これまで検査が行われた主な品目は、乳製品から水産物、加工食品まで多岐にわたる。先月12日には、韓国産のホウレンソウやサンチュ(チシャの一種)に、ごく微量のセシウムやヨウ素といった放射性物質が初めて検出されたほか、先月16日には韓国12地域の大気中に、ヨウ素が検出されたこともあり、韓国産においても農産物や水産物、原乳を中心に検査を強化している。そのほか、韓国原子力安全技術院(KINS)では、1994年以降毎年2回実施していた水産物や海水の放射能検査を、毎月行っていくことを決めた。
■民間レベルでも放射能検査
政府機関以外でも、放射能に汚染された食品の流通を防ぐ独自策を講じている。食品流通会社のCJフレッシュウェイは、韓国で生産されたホウレンソウやハクサイなどの農産物25品目のほか、ロシアや中国など日本近海で捕れた水産物のうち韓国で多く消費される38品目について放射能検査を行っている。
Eマートやロッテマート、サムスンテスコ・ホームプラス、農協のハナロマートといった大型スーパーマーケットでは、放射能に汚染された食品が、店頭に陳列されてもレジで発見できる「危害商品販売遮断システム」を導入している。食薬庁などの検査機関が、日本産または日本産の原材料によって製造された商品を検査し、その結果、放射能などが基準値を超えた場合、該当商品のバーコードを各店舗のレジシステムに登録する仕組みになっている。
民間企業に対しては、政府による支援も行われている。農林水産食品部は、農畜産物や加工食品を海外に輸出する韓国の業者が、取引先からの要請によって放射能検査の証明書が必要となった場合、検査費用の全額を負担する制度を導入した。
■放射能汚染不安、54.2%
就職ポータルサイトのジョブコリアがこのほど、会社員321人を対象にアンケートを行ったところ、54.2%が「東日本大震災による放射能汚染を不安に感じている」と回答したことが分かった。また、これにより16.5%が「買い占めをした」と回答。買い占めを行った品目は、「日本から輸入された食品および加工品」(60.4%)、「韓国近海で生産された食品および加工品」(54.7%)などが多かった。
食の安全を求める消費者の声が徐々に高まっていることなどを受け、新世界百貨店は、タラの仕入れ先をこれまでの北海道近海から、米アラスカへと変更した。震災以降、日本近海での操業が難しくなったほか、顧客の不安を取り除く狙いがあるとみられる。顧客から良い反応が得られれば、輸入量を最大10トンまで拡大する方針だ。このほか、ビタミン剤メーカーの高麗銀丹は、同社製品が英国やドイツなどの欧州産であることを強調するなど、日本産でないことをアピールするマーケティングを行うメーカーもある。
放射能に対する社会的な不安が高まっている今、政府も企業も対応を迫られている。それにより食の安全に対する不安を拭い去れるのか、動向に注目が集まっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110502-00000011-nna-int