「内憂外患」が、食品や生活用品の価格をジワジワと押し上げている。国内では、東日本大震災による品不足。海外でも、小麦や原油など商品価格が高騰。被災地の生産拠点は少しずつ復旧し、品不足は解消に向かいつつあるが、中東・北アフリカの政情不安の長期化などで、国際的な商品価格の上昇は収まる気配がない。スーパーの特売も激減しており、消費者の懐具合は厳しさを増しそうだ。【井出晋平、谷多由】
◇卵、高止まり
「特売できないよ」。東京都内のスーパーの鶏卵売り場担当者はこうぼやく。1パック10個入りの主力商品は震災前より20円高い298円。震災直後のような欠品こそなくなったものの、仕入れ価格は一向に下がらない。「今は品切れさせないことが大事。少しでも安くするとすぐ売り切れてしまうので、大幅値引きは控えざるを得ない」という。
「物価の優等生」の卵が値上がりしているのは、東北地方の養鶏場や飼料工場が被災し、親鶏の減少とエサ不足で産卵数が落ち込んだためだ。鶏卵販売会社「JA全農たまご」によると、卸売価格は3月末、1キロ260円(Mサイズ)と、震災前に比べ約4割上昇。徐々に入荷は増えているが、28日も約240円と高止まりしている。
◇特売が激減
震災後の品不足の影響は、さまざまな製品に及んでいる。全国2万店以上のスーパーのチラシを調べている「チラシレポート」によると、震災前に平均83円だった大手メーカーのミネラルウオーター(2リットル)の4月18~24日の価格は、約10%高の92円。450グラムのヨーグルトが134円から146円に、12ロール入りトイレットペーパーも286円から312円にそれぞれ値上がりした。
スーパーの特売も激減した。チラシレポートの集計では、3月7~13日に約3300回特売されていたアサヒビールのスーパードライは4月18~24日は1913回に、キリンビールの淡麗グリーンラベルは1982回から16回にそれぞれ減った。1066回あったアサヒ飲料のミネラルウオーター「六甲のおいしい水」の特売はゼロに。28日、都内のスーパーで買い物をしていた主婦(59)は「チラシの特売で献立を考えていたのに、どこもしなくなってしまい、財布には厳しい」と話す。
◇ガソリン2年半ぶり高値
国際市況の高騰が追い打ちをかける。中東、北アフリカ情勢の混乱で原油、天然ガスが高騰していることを受け、東京電力の5月の電気料金は標準家庭(夫婦と子供2人)で6390円と、4月から75円高くなり、6月はさらに84円引き上げられる。25日現在のガソリンの全国平均小売価格も1リットル152円70銭と約2年半ぶりの高値をつけた。
昨秋から今年にかけて砂糖、食用油、コーヒーも値上げされ、今月22日には日清製粉など製粉各社が業務用小麦粉を6月下旬から値上げすると発表。政府が今年4月に小麦売り渡し価格を18%引き上げたためで、値上げ幅は10%強になる。
◇値上げで「買ってもらえない」
「値上げしないと無理かな」。千葉県市川市でケーキ店を経営する金子章吾さん(51)は、小麦粉や砂糖、鶏卵など材料価格の相次ぐ上昇に見舞われている。主力商品のショートケーキの価格は290~330円。材料費上昇を吸収するには1割の値上げが必要だが「自粛ムードで3月の卒業シーズンの注文も減った。値上げすると買ってもらえないのでは」と悩む。
第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは「震災による企業業績の低迷と値上げのダブルパンチが、消費を落ち込ませる可能性が高い」と影響を懸念する。
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