[ カテゴリー:災害 ]

「ない」から「ある」への変化―震災をチャレンジに

「お金がない」「経済が回らない」……。3月11日以前、日本は「不景気」という言葉が溢れかえっていました。先の見えないさまざまな課題がある中で、多くの日本人は希望を失っていました。

そのような最中、日本が揺れ動きました。震災によって直接的に、または間接的に、多くの方が大きな被害を受け、今もなお多くの課題は進行中です。「日本は再び立ち上がれるのだろうか」――このような思いを抱いている方もいらっしゃるでしょう。

けれども私は最近、「新たな何か」が芽生え始めているような気がします。それは今後の日本を支える、大きなメンタリティーの変化のようにも感じます。そこで今回は、震災によって日本人が持ち始めたメンタリティーの変化に触れ、震災からどのように立ち上がっていけばよいのかについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

●歴史が証明している、日本の復興

「まるで、戦争の後みたいだ」――被災地を目の前にしてつぶやいていたおばあちゃんの言葉です。私は直接戦争を体験していないので、それがどれほど大変だったのか情報からしか知り得ませんが、被災地のおばあちゃんが言うように、今、私たちが経験していることは、ひょっとしたら戦争に匹敵するほど大きなことなのかもしれません。

けれども、皆さんもすでにご存じのとおり、私たちは戦後、一面の焼け野原から新たな新しい時代を築いてきました。「歴史は繰り返す」といいますが、この難局からも復興、発展していけるのは間違いなさそうです。

これまでもそうだったように、私たちには、そのチカラがあります。

●「あのときのおかげで」と思える日が必ず来る

私が住む新潟県は、近年に2回、大きな地震を経験しています(幸い、私が住んでいる地域では大きな被害はありませんでした)。テレビのローカル番組では、今回の震災の内容に加えて、新潟県に起きた地震で被災した皆さんがどのように立ち上がっていったのかについて触れた内容も、数多く放映されています。その中で、あるお父さんは、次のように話していました。

「地震の時は本当に大変だった。けれども、あの地震のおかげで周りとの絆が深まり、本当に大切ものは何かということが分かった」

震災に限らず、私たちは生まれてから今まで、幾つかのネガティブな体験をしてきました。つらい体験の渦中にいるときは本当に大変で、それを乗り越えることに必死です。けれどもそのネガティブな過去の体験を今振り返ってみると、「あのときのおかげで……」と思えることがたくさんあることに気づくと思います。その瞬間はネガティブな体験でも、時間が経過するとポジティブな体験に変わるのです。

今、生きることに必死の方もいらっしゃると思います。「永遠にこの日が続くのではないか……」先行きが分からず不安な方もいらっしゃるかもしれません。けれども、新潟で被災したお父さんが「あの地震のおかげで」と言っているように、近い将来から今を眺めれば、「あのときのおかげで……」と言える日が必ず来ます。

この難局を乗り越えたとき、私たちが手に入れているものには、どんな価値があるのでしょうか。

●「ない」から「ある」に気づき始めた日本人

「今日も電気がついていることがありがたい」

「食事ができることがありがたい」

「仕事ができることがありがたい」

「家族と一緒にいれることがありがたい」

「友達と会話できることがありがたい」

「今日も生きていられることがありがたい」

最近、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアでこのような言葉をよく目にします。直接被災されていない方の生活はそれほど変わっていないはずなのに、多くの方が電気、食事、体、仕事、職場、同僚、家族、友達など、実は、たくさんのものが自分の周りに「ある」ということに気付き始めました。

震災前は違いました。「お金がない」「日本には資源がない」など、どちらかというと、自分の周りに「ない」ことに目を向けていました。けれども、実際は「なかった」のではなく、「本当はあるのに、見えていなかった」のです。

自分の周りに何も「ない」と思うか、それともいろいろなものが「ある」と思うか――この意識変化が今、日本の至るところで起こり始めています。この変化は、今後の日本に大きな影響を与えるのではないかと思います。「絆」「知恵」「アイデア」など、まだ気がついていないリソースはたくさんあるはずです。

●少しずつ良い方向へ動かし、続けること

とはいえ、いくらリソースが「ある」と気がついても、「やっぱり、先行きが見えずに不安」と思う方もたくさんいらっしゃると思います。課題解決の長期化が予想される中で、不安に思うのも当然です。だからといって、「不安に思わないようにしよう」と思えば思うほど、不安になりますよね。

先行きが見えないときの不安を解消し、先行きを見えるようにするための良い方法は、目の前のできることを、少しずついい方向に動かし始めること。そして、それを続けることだと思います。続けることで、少しずつ前進感や達成感、成長感が生まれますし、見えなかった先行きが少しずつ見えてくるからです。

私の体験をお話します。私は今、事業を行っていますが、将来の安定や保証などは何もありません。先行きが見えない不安や、収入を失う不安に、以前は押しつぶされそうになることがよくありました。でもあるときから、「あ~、もうだめかも」と思うときほど、目の前にある自分ができる小さなことを、いい方向へ動かし続けるようにしてきました。もちろん、すぐに思い通りになるわけではありませんでしたが、少しずつ動かし続けることで、前に進んでいる感じが出てきます。前に進む感じが出てくると、新たなやる気や目標にもつながってきました。この継続が、結果的に成果にもつながってきました。

こうして、「不安定な環境」を「安定したこころ」で歩いていけるようになりました。

今、目の前にたくさんのがれきがあり、途方に暮れているという方がたくさんいらっしゃると思います。中には、物理的な瓦礫はなくとも、仕事の見通しが立っていない、心の中がさまざまな思いが散らかっているなど、心のがれきで覆われているという方もいらっしゃるかもしれません。先が見えないほど、不安になりますよね。その気持ち、分かります。

先行きが見えず、不安なときほど、今、できることをやってみてください。大丈夫! 近い将来、未来は必ず見えてきます。

今回の震災で、日本人のこころが多くの疲れやストレスを感じました。この「こころの処方箋」は、このような非常時に、ビジネスパーソンがどのように自分のこころをマネジメントし、周囲と関わり、組織を方向付けていったらよいのかというテーマでお送りしてきました。

震災が起こる前から、近ごろの日本社会はとても不安定な状況でした。そして、震災が起きた今、「安定って、一体何なのだろう」とあらためて考えます。これまでの安定と言えば、大きな会社で働くことや、お金や物質的な余裕を持っておくことという考えもありました。それらも安定に必要な要素に間違いはありません。けれども、お金やモノを一瞬にして失う現実を目の当たりにしている今、ひょっとしたら、不安定な社会を安定したこころで歩むことが、最大の安定と言えるのかもしれません。

今回起こったのは、確かに未曾有の大震災でした。けれども、ここから立ち上がっていく私たちは、「大きな震災」を「大きなチャレンジ」という認識に変えていきたいと思うのです。これからもさまざまな課題が続くかもしれません。新たな課題が出てくるかもしれません。けれども、私たちは行くしかありません。これまでもさまざまな難局を乗り越えてきたように、新たなチャレンジを始めるチカラが、私たちにはあります。

「こころの処方箋」は今回が最終回です。ご覧いただきましてありがとうございました。皆さまが安定したこころで「大きなチャレンジ」に挑む、何かしらのヒントになりましたら幸いです。[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),ITmedia]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110428-00000016-zdn_ep-sci

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