いま「プルト君」が熱い。ネット上などで話題になっているアニメの登場キャラクターのことだ。プルト君は、こんな具合にプルトニウムの安全性を訴える。
〈プルトニウムが原因でがんになったと断定された例はまったくありません〉
〈ボクの取り扱いについては厳しい基準できちんと管理されているので、ボクが人体に影響を与えることは考えられません〉
〈万一飲み込んでも、胃や腸からはほとんど吸収されず体の外に出てしまいます〉
「プルトニウム物語」と題された約11分間のこのアニメは、1993年に動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)が広報用に制作した。子どもがプルトニウムの入った水をゴクゴク飲むシーンなどが問題視され、当時の米エネルギー省長官から「プルトニウムの危険性を過小評価している」などと抗議文が送られた、いわく付きの代物である。
それが、最近になって動画サイトなどに投稿され、再び注目を集めているのだ。
よみがえったプルト君はツイッターのアカウントも取得しており、誰が書いているのか、
〈東京電力の放射能はきれいな放射能だから、細かい数字は気にしなくていいよ!〉
〈ボクはね、原子力安全保安院っていう、かしこいひとたちに守られているから、とってもあんぜんなんだよ!〉
などと、とぼけた呟きを繰り返している。
プルトニウムは福島第一原発の事故で、敷地内の土壌からも検出されている。飲んでも大丈夫だなんて、本当だろうか。琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬氏(物性物理学)はこう話す。
「きわめて乱暴な物言いで、野蛮すぎます。たしかに経口摂取しても排出される部分があるのは事実ですが、体内に吸収される微粒子が必ずある。プルトニウムの毒性はウラン235や238と比較してもはるかに強く、微量でも危険です。一つの現象だけを伝えて、重大な事実を伝えないのは、ダマシのテクニックです」
当事者の日本原子力研究開発機構は、
「当機構が統合して発足する以前の話ですので、当時の状況をわかる者もおらず、コメントのしようがございません。ツイッターもまったく関知していません」
と無関係を強調するが、ネットでは今日もプルト君が「ボクはあんぜんなんだよ!」と元気にアピールしているのだった。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110419-00000301-sasahi-soci