東芝の佐々木則夫社長は14日、毎日新聞などのインタビューに応じた。成長の柱と位置づける原子力事業については「各国で安全規制が見直されつつあり、着工が遅れる可能性がある」と述べ、15年度までに関連事業の売上高を1兆円とする目標達成が困難との見通しを示した。ただ、11年度の業績への影響については「上期は落ち込むかもしれないが、下期で取り戻せると見ている」と話し、新興国での事業拡大などに意欲を示した。
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東芝は15年度までに国内外で39基の原子力発電設備を受注することを目指している。佐々木社長は、東京電力福島第1原発の事故がこうした目標に与える影響について「1兆円達成がいつになるかは今はわからない。39基の受注も遅れると思う」との認識を示した。
ただし、「原子力が二酸化炭素排出量の削減を解決する有力な選択肢であることは変わりがない」とも強調。東電と協力して進めているトルコや米国などへの原発輸出も「やめるとは言われていないし、東電以外にもパートナーになりたいという電力会社はある」と話し、交渉継続に期待を示した。
12年度に売上高8兆円を掲げる中期経営計画については「原子力事業の割合は全体の1割弱で、それほど影響はない。震災の復興需要もあり、全体では成長できると思う」と話した。
一方、東芝が2、3号機の建設を担当した福島第1原発の処理については「収束に最大限の努力をしたい」と述べた。高濃度の放射性物質を含む汚染水を除去するため、フランス原子力大手、アレバなどから入手した除染装置の提供などを検討していることを明らかにした。
部品メーカーの被災や電力不足の影響で、部品・材料調達への懸念が強まっていることについては「交渉を進め、かなりの範囲でめどがついた」と述べた。最終利益予想を1000億円などとしている10年度の業績については、「最終利益は予想より上ぶれている。震災の影響は大きくない」と強調した。
夏場に見込まれる電力不足への対策については、関東地方の工場や事業所を3グループに分け、順番に長期休暇を取ることで消費電力を抑える案を検討していると表明。
また被災地支援として、被害の大きかった岩手、宮城、福島各県の系列の電器店21店舗を支援するため、車や営業場所を提供したり、東北地方で約100人を優先的に雇用することなどを検討していると明らかにした。【弘田恭子】
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