[ カテゴリー:社会 ]

「安心・安全」取り戻せ 「政府は海外へ情報発信を」 産業技術の日本ブランド

東京電力福島第1原子力発電所の事故評価が12日、最悪の「レベル7」に引き上げられたことで、原発の信頼性にとどまらず、日本の産業技術に対する評価や経済、金融市場の安定性を損なう事態が心配されている。政府の対応の遅さなどが背景にあり、民間からは、「政府は海外に情報発信すべきだ」「日本ブランドの価値を取り戻そう」との声が上がる。

日本の原発は「世界一厳しい」耐震基準をクリアしてきた。原発メーカー首脳は「あの巨大地震でも制御棒が入り、原発は停止した。海外では『津波さえ来なければ大丈夫だ』と評価されている」と語る。ただ、安全神話をてこに政府が成長戦略に掲げてきた原発輸出へのダメージは、原発と並ぶ柱である高速鉄道や水道インフラ輸出ビジネスにまで広がりかねない。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「最も驚いたのは、大量の放射性物質が放出されたと公的に認めるまでに1カ月かかったことだ」とする原子力専門家の話を紹介し、韓国のメディアも「対応が遅いとの指摘は免れない」と政府の対応の遅れを批判した。

実際、12日の東京株式市場は、事故評価の引き上げ後に日経平均が一時、200円超下げた。安全資産に資金が逃げる形で円相場も円高に向かい、地震から1カ月が過ぎ、落ち着きを取り戻していた金融市場は、あっけなく混乱した。

日経平均の終値は164円44銭安の9555円26銭まで買い戻されたが、震災発生後の下げ幅としては、発生当日(3月11日)の179円95銭安に次ぐ4番目の大きさになった。

午後には円が一時、83円半ばまで急騰し、自動車や電機株の売りにつながった。原発事故の影響拡大に伴う株安と円高の構図は、市場の負の連鎖の存在を改めて示した形だ。

「日本離れ」が強まり、世界をリードしてきた産業技術に対する信頼や評価まで失わないようにするには、「日本政府は国内だけでなく、海外に向けた説明を十分にすべきだ」と、日本総合研究所の湯元健治理事は訴える。

初の脱線事故を起こした平成16年の新潟県中越地震後、地震検知から停車動作までの時間を短縮する新システムを導入した東北新幹線は、今回の震災では事故を免れた。経済同友会の桜井正光代表幹事は12日の会見で、こうした世界に誇る技術を例に挙げ、「安心・安全の技術が日本のブランドだ。これを傷つけてはならない」と強調した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110413-00000095-san-bus_all

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